東京都写真美術館のエキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク
インターネットアートへの再接続【2020.8.18(火)—10.11(日)】を見てきました。
エキソニモは水戸芸術館や森美術館のグループ展で見たことはありましたが、個展で観るのは初めてです。
過去の展示でインパクトを残したからこそ、今回起用されたのだと思います。
冒頭にはEXONEMOという文字が色んな手法で表現されています。
はじめのEはメジャー、始めのOは太陽系の映像の投影がぐるぐる回っています。
次のEはバルーンです。
Mに至ってはビットコインの価格変動で表現されています。
彼らはインターネットを素材にしたアートを多く作るアーティストユニットです。
この展覧会もwebと連動しており、web上では年表方式で今回展示されていない作品を含む彼らの作品を見ることができます。
一方で美術館の展覧会という形式をとる必要があるのか?という疑問が当然出て来ます。
展覧会では見てわかる、楽しめるような工夫が凝らされています。
会場入り口からはLANケーブルが会場内に伸びています。
これは作品に含まれる要素を示しているものです。
特に面白かったものをピックアップしてました。
BOTとは悪意あるプログラムのことです。
よくパスワードを求められるときに歪んだ文字の入力を求められることがありますが、アレ(CAPTCHAというソフトです)を作品化したものです。
Tシャツに歪んだ文字がプリントされています。自動で作成された画像が意外とファッショナブルなのが面白いです。
移動するバスに5分ごとに周囲の風景を撮影するカメラを仕掛け、その写真をバスの外装に取り込んでペーパークラフトにできる作品です。
都市生活になくてはならないバスが街に溶け込んだ究極の形かもしれません。
断末魔のキーボード版。キーボードをショットガンで打ち、そのときにタイプされた文字がそのまま作品タイトルになります。
広範囲にダメージを及ぼしているようで、打ち込まれた文字は結構単純です。
マウスと違ってショットガンを撃ち込まれてもキーボードは健在です。これがペンは剣より強しなのか?
1996年に作られた最初期の作品です。
利用者が送信した顔のパーツの情報と、ネット上の情報が混ざり合い、次々と新しい顔が生まれるという作品です。
彼らの初期の作品はパソコンの性能からかグラフィックに限界があるのですが、それゆえにモンドリアンの作品みたいな原始的な喜びを感じます。
光学式マウスを重ねるとお互いのマウスが発する光が干渉し合い、パソコン上のカーソルが勝手に動き出します。
これを発見した彼らはマウスを重ねた形状を祈りの形に見立てて作品化しました。
このように無機物であるインターネットに魂が宿っているかのような作品が多く展示されていました。
マウスをいろんな方法で破壊する映像作品です。
画面上で動くマウスカーソルは破壊された時のマウスカーソルの動きを表わしています。
マウスカーソルが無茶苦茶に動くのが断末魔、やがて動かなくなるのが御臨終というわけです。
破壊の方法は水没、車に轢かれる、丸ノコなどですが、動画のような変わり種も。
丸ノコの動画は指が切れそうで見てて怖かったです。
液晶モニターに絵具のボトルを映し出し、その映像の余白部分にボトルの絵具を直接モニターに塗ってできた作品です。
映像が超高画質であるせいで、一見本物と映像の絵具が区別がつかないのが面白いところです。
映像部分が手ぶれなどで微妙に動くのもかすかな違和感として見て取れるのもポイント。
インターネットをテーマにしているというと難しいイメージがありますが、実際にはマウスやキーボードなど身近なものを使っていて、とっつきやすかったです。また笑いの要素を含んだものが非常に多く、ブラウン管を使ったナム・ジュン・パイクを思い出しました。会場構成も色鮮やかで見た目にも面白い展覧会でした★★