東京国立近代美術館の眠り展:アートと生きることゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで【2020.11.25 – 2021.2.23】を見てきました。
国立美術館のコレクションを持ち寄って企画された特別展です。
特別展は借り物、常設、企画展は自前という既定路線を打ち破る試みです。
以前の展示の間仕切り壁を使いまわしたという会場構成は、カーテンをかけて眠りを表現しています。
なんだか閉店しているような異様な雰囲気です。
睡眠に関する作品が並んでいるというよりは、眠ることによって意識が混濁した状態、夢の中のような作品が多かったです。
上記の作品は眠っている間に創作が行われることをダイレクトに示しています。
そういうわけで直接的に眠りに関する作品は第一章の絵画作品ぐらいでした。
上記の作品は寝ている人?が冷気のようなものを放っている不思議な作品です。
悪夢のような作品で、日本でもよく紹介されるルドンや・・・
シュルレアリスムのエルンストは分かりやすい夢の作品でしょう。
エルンストはフロッタージュ(葉っぱなどを紙の上からこすってイメージを浮かび上がらせる手法)作品も紹介されていました。
これらは夢と無意識の深い関係を示しています。
妻がいたく感心していた作品です。
実際に海に漂いながら撮っています。
撮影場所は風光明媚な観光地なのですが、天気も悪く、暗い色調の海水が画面の大半を占めるため、なんだか不穏な風景ができています。
一歩間違えたら転落していくような不安感を表現しているのでしょうか?
3つのスクリーンに眠っている人が映っており、順繰りに寝覚めて夢の内容を語ってはまた眠る、ということを繰り返します。眠っている間に人物が変わっていき、合計18人の夢の内容を聞くことになります。
話の内容はよくあるとりとめのないものですが、共通して不安感を抱えていることが伝わってきます。彼らは台湾の外国人労働者で、夢は彼らの望郷を表わしています。
森美術館で個展までやった塩田さんですが、同展でもインスタ映えな大掛かりな作品以外にも小さな作品も展示されていました。本作もその一つで4分の短い作品。
眠る女性と不在のベットから落ちる砂が交互に映し出され、同時に金属音のような音が鳴り響いています。
やはり不安感を強く感じさせる作品です。
近代美術館らしく、戦時下付近の絵画をまとめた部屋がありました。
戦争の不安を表わした作品が多いのですが、やはり夢を思わせる作品が多いです。
工場、鷲、岩に掘られた顔とアメリカを強く意識したものが並んでいます。
割れた卵が不安感を煽りますが、青空、穏やかな海などそれと対照的なものも描かれています。
大きすぎる卵、卵の破片を船にする人、手にも木にも見えるモノなど脈絡のなさにより多様な見方が出来そうです。
これまでと大分テイストが違いますが、これは戦後の作品。
戒厳というタイトルに反して、飛ぶ馬、喧嘩する鶏、踊る(?)オバチャンとお祭り騒ぎを感じます。
作風がばらばらなので、毎回意外性があって好きな河口さん。
今回も見たことのない作品で、壁には植物の種を封入した鉛の板が30枚かかり、床には土、水、空気を封入した心中、銅、アルミニウムの棒が各30本置かれています。
これらは植物が成長するのに必要な最低限のもので、チェルノブイリの事故を受けて作られた作品です。
これも眠りというより、悪夢を発想のもとになっているようです。
しまい込んだもの=眠っているものであり、作者は前から家にあるものでも新鮮な気持ちで対象に向き合っています。
タダの記録写真ですが、作者の視点のオリジナリティにより作品と化しています。
今回の展示自体も「眠り」というキーワードにより、国立美術館に眠ってる膨大なコレクションの一部が人目に触れた形です。普段見ないようなマニアックな作品が多かったのは結構満足しました。★