練馬区立美術館のRe construction 再構築【2020.07.08(水)~ 2020.09.27(日)】を見てきました。
流麻二果、青山悟、冨井大裕、大小島真木の4名の作家さんに各一部屋ずつ割り当て、美術館の収蔵作品と自身の新作を組み合わせて展示空間を構築してもらうという企画です。
考えてみればこれは作家さんにも美術館にもメリットの大きい企画です。
作家さんからすると美術館の収蔵作品に触れられるし、展示企画もできます。
美術館からするとこの美術館にまつわる作品を新たに収蔵できるうえに、収蔵作品を使った企画展も開催できます。
流麻二果さんの部屋。色を担当したということで、4人の中で唯一純粋にキャンバスのみの作品構成でした。
抽象画なのですが、タイトルからも明らかに何らかの画面構成というか具体物が読み取れます。
直前の部屋にあった白髪一雄さんの作品を彷彿させます。
ただ白髪さんより色使いは鮮やかです。
青山悟さんの部屋。うって変わって現代美術らしい構成です。
青山さんが選んだ収蔵作品は郭さんの一連のシリーズ。
TIME誌の表紙を飾る歴代大統領の顔の下半分を自分の顔とくっつけたコラボ作品です。
如何に違う顔つきでも2人の顔の輪郭や目口鼻の配置はみごとにシンクロしているのが面白いです。
郭さんとの共通点は時事問題を取り上げているところ。
なぜかほとんどの作品が刺繍でしたが、コロナウイルスの作品が最も多かったです。
ソーシャルディスタンスに関する作品もありました。
これは実際に監視員さんが持ってたりしますが、コロナ関連はやはりどうやっても面白くならない・・・だからあまり作品化する人がいないのでしょうが・・・
コロナ以後の作品もありました。
天井から吊られた作品はF15とブルーインパルスでした。
極めつけが古今東西のデモを集めたこの作品です。
背景には世界中のランドマークも書かれています。
全部わかる人は運動家ぐらいでしょうか。
冨井大裕さんの部屋。
日用品を組み合わせただけという、もの派の後継者みたいな作風なので一番インパクトがあります。
壁には小野木学さんの作品が大量に掛かっています。
メインビジュアルにもなっている作品です。
冨井さんの作品にしては凝ってるように見えますが、実際にはアクリル板と半分に切った折り紙を重ねているだけの作品です。
作品タイトルもそのまんまで、ウォーホルの言葉ではありませんが、過剰なまでの裏表のなさが魅力的です。
一番面白いなと思ったのがこの作品。
ゴミ箱に丸めた紙を詰め込んで逆さにしただけの作品ですが、角度が変わっただけで生き物めいて見えるのが面白いです。
ちなみに写真奥に落ちている紙屑も「紙屑と空間(試作)」という作品です。
本来作品の裏側である展示プランも公表されていました。
しかし過剰に平面的で分かりにくい(笑)
部屋の隅には仮設の階段があります。
登っても何かあるわけではなくて、上から作品、というか空間を眺めることができるだけです。
わざわざライブカメラで階段を登らなくてもこの光景が見れるようになっており、冨井さんからするとこれを見せることに相当意味があったようです。
最後が大小島真木さんの作品です。
身体がテーマというだけあって、これまでの3人のようなクールな作品から一転。具象で血の通った特濃の作品が展開されています。
古代の儀式のような作品が置かれていました。
使われている素材は陶器をメインに、刺繍、木、猪の骨、縄文土器、貝、石などとなっていました。
本当に古代の儀式を再現したのかもしれません。
この布の作品の裏にも作品があります。
こちらは革製の人体モデルに映像を投影するというもので、映像はミジンコのような微生物から天体のような巨大なものまで様々。
今回の展示の中でもインパクトが強いものでした。
展示空間もよく考えられていたし、全く違う4人の作家の作風により色々新しい発見や新たな美術の見方ができるようになるいい展覧会だったと思います。★