練馬区立美術館で開催中の「没後20年 麻田浩展 ―静謐なる楽園の廃墟―」(2017年9/28-11/19)を見てきました。
練馬区立美術館は西武池袋線の中村橋駅のすぐ横にあります。都内でここまで交通の便のいい美術館は実は少ないと思います。ごく普通の箱形の堅実な建物ですが、変わった展覧会も多く、意外と見過ごせないです。去年はしりあがり寿さんが「現代美術 回・転・展」なる展覧会を行い、その奇妙な世界観を開陳しました。
ちなみに美術館の周りは美術の森緑地という公園になっていて、色んな動物が芸術作品になっています。
麻田浩さんの展覧会告知看板は夕暮れ時にマッチしてますね。そしてその横の大根馬はミスマッチです(笑)
エントランスには巨大なタペストリーがかかります。この滝の絵「御滝図(兄に)」は今回出品されている作品の中でも数少ない、実際の光景を元に描かれた作品です。
麻田浩さんは父、兄も芸術家である芸術一家の出。初期はアンフォルメルを思わせる抽象画を描いていましたが、後に朽ち果てた廃墟のような独特の作風を獲得しました。今回の展覧会はその画業の全体を俯瞰するものになっています。
で、麻田さんの作品ですが、確かに美しいものが描かれているのですが、ずらっと作品を並べられてもあまり世界観に広がりを感じません。上の作品はかなり大きな作品ですが、麻田さんのお気に入りと思われる小物が並べられているだけであまり変化を感じません。
そこで思い出したのが、おなじ練馬区立美術館で回顧展を行った石田徹也さんのこと。石田さんも麻田さんと同じく自殺した作家さんですが、その作風には表現の過剰さゆえか、どこかおかしみを伴います。
また廃墟というモチーフは川村記念美術館のジョセフ・コーネルの作品群も思い出します。しかし彼も箱がオルゴールになってたり、砂時計になってたりで、エンタメ性を意識した作品が結構あります。
それらに比べると麻田さんの作品は美しくはあっても共感や親しみとは程遠いです。モノが並んでいるだけの物語不在の作品群は展覧会のサブタイトルである「楽園の廃墟」であると同時に、作者の出口のない苦しみを表しているようでもありました。