河出書房新社から出てる「井上洋介図鑑」を見ました。
井上洋介氏はちひろ美術館東京の展示でその奇想ぶりに驚かされましたが、本書ではその世界観がさらに広がっていました。
井上氏はタブロー、漫画、舞台芸術、挿絵、絵本と様々な仕事をされましたが、その根本は奇想溢れる一コマ漫画です。
こちらのカットなどはかつて新聞で見られた「サザエさん」のようなほのぼのとした笑いを誘います。
これが漫画になってくるとぐっとナンセンスが進むから面白いです。こちらの漫画は、縁日で買った金魚があらゆるものを食べて地球より大きくなる、という話です。際限なくエスカレートしていくストーリーは井上氏の得意技です。
井上氏は長く画材屋の「レモン画翠の広告イラストを担当しており、雑誌「美術手帖」などに載っていたそうです。注文にこたえつつも、井上氏らしい奇想が見られます。
しかしその真骨頂は絵本で一番発揮されたようです。たわしは井上氏が好きなモチーフだったらしく、なんでも背負って移動するのは戦後の体験かららしいです。
たしかにあじのひらきというのは子供心に不思議に感じる造形ですが、それを大人になってから一冊の絵本にまでしてしまうところが非凡な点です。
こちらは井上氏自身も気に行ってたアイデアらしいです。シンプルな奇想ほど良いということでしょうか?
僕としてはこちらをベストに押したいです。「ふるおうねずみ」は家の屋根裏に巨大な鼠が住んでいるという者でしたが、こちらは同じ構図の絵で窓からいろんな動物が遊びに来るという展開です。動物ごとに違う擬音が面白い。「ぎゅうぎゅうどうぶつえん」というタイトルも建築好きにはたまりません。
まだまだ発掘し甲斐がありそうな井上氏の作品。いつか大規模回顧展をしてほしいですね。