• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★千の言葉より一枚の写真「アトリエの巨匠に会いに行く」

南川 三治郎 さんのアトリエの巨匠に会いに行く」を読みました。

最大の特徴は表題に書いた通り、千の言葉より一枚の写真ということに尽きます。
その象徴的な例としてジャン・ピエール・レイノーがいます。
レイノー氏といえば原美術館のインスタレーション作品「ゼロの空間」を見た方も多いと思います。元邸宅である美術館の屋上に出るための通路を改造した作品ですが、曲がった通路に沿ってびっしりとタイル、壁にはタイルの絵(?)と「???」な作品ですが・・・

本書の彼のアトリエの写真を見れば一目瞭然、「ああ、そういう変な人(失礼!)なんだな」ということがすぐ分かります(笑)もっともこの家で普段から生活しているわけではなく(キッチンもありません)あくまでレイノー氏の思索のための空間のようです。

 

こんな感じで本書の写真は作家の思想をダイレクトに伝えるインスタレーションアート集とも読めます。

 

さて、本書には他にも興味深い写真がたくさんあります。

こちらはヘンリー・ムーア氏。箱根彫刻の森美術館などに沢山作品がありますが、抽象的過ぎてイマイチ見方が分かりませんでした。しかし作品の横に作家が立つだけで、かなり印象が違って見えます。

 

人体から直接型を取る作風で知られるジョージ・シガール氏。福岡市美術館DIC川村記念美術館でしか作品を見たことがありませんが、彼は家業の養鶏所を潰してしまったという経歴の持ち主だそうです。そこで5000羽のニワトリがいた10の部屋を展示室にしてしまったのです。

 

アンソニー・カロもあまり国内では見れない作家です。現在改装中の滋賀県立近代美術館ぐらいですか。背後の彫刻作品とプールという取り合わせが素敵です。

 

中でも一番気に入ったのはサルバドール・ダリです。本書に登場する作家の中でもジョアン・ミロと並んで圧倒的に巨匠なイメージのあるダリですが、南川さんは彼を「独裁者」と表現。写真からもそれにふさわしい淋しさや虚飾が見て取れます。

その会話もいかにもダリっぽいです。

 

ー今日はご機嫌いかがですか

ダリ「ファンタスティック!!」

ー冬の間ニューヨークでなにをしてました?

ダリ「ニューヨークで金を稼ごうと思ったからさ、金が好きなんだよ僕は!」

 

うーん、すごい人なんでしょうが、とりつくしまがないというか、あんまり友達になりたくないタイプですね(笑)ナンコレ度★★

コメントを残す