アーティゾン美術館の宇宙の卵【2020年6月23日[火] – 10月25日[日]】を見てきました。
イタリアのヴェネチア・ビエンナーレの帰国展です。
ただ普通の帰国展と違うのは、展示空間を90%のサイズで再現しているという点です。
外観に関しては入り口のみの再現です。
素材はボール紙など仮設のものを使っており、色味も全然違うのですが、現地の様子を限界まで再現できている展示だと思います。
内部は中央に安野太郎氏の「COMPOSTITION FOR COSMO-EGGS”Singing Bird Generator”」のバルーン上のベンチがあり、周囲に下道基行氏の「津波石」の映像作品が設置されています。壁に石倉敏明氏の詩が刻まれています。
展示室全体の空間構成は能作文徳氏が担当しています。
下道さんは全国に残る戦争遺跡や、海外の旧日本領にある鳥居の写真集を出しているアーティストさんです。
今回は各地の「津波石」を映像で展示しています。
津波石とは沖縄など全国各地にある、津波によって海中の巨石が打ち上げられたものです。
平原に唐突に出現する巨石はインパクトが強く、すぐ撤去されるものがある一方、何百年と残り、信仰の対象になっているものもあるそうです。
東日本大震災では建物上に打ち上げられた船が印象に残りました。災害をモニュメント化する試みの中で、このような研究は貴重だと思います。
一方安野さんの作品は、会場の各所に設置された12本のレコーダーが自動で演奏するというもの。
自動演奏する仕組みは、会場1階から2階を貫通する穴を通して設置された巨大なバルーンから贈られた空気によって行います。
バルーンはベンチにもなっており、人が座ることでレコーダーの音も変化するという仕組みです。
これらの会場構成は建築家である能作氏が行っています。
彼の代表作である自邸兼事務所の西大井のあなは1階から4階まで床に穴を開けて貫通させたリノベーション建築です。
これと同様、既存の建物を貫く穴を最小限の操作で作品に活用した形です。
その他、展示の資料はかなり豊富に揃っていました。
過去、ヴェネチア・ビエンナーレは著名な作家が選ばれることが多かったのですが、今回は若手を中心としており、また4人の共同でありながら一体感のある展示になっていました。
なかなか日本では見れないような実験的な展示で、ヴェネチアに行きたくなるような展覧会でした。★