BankARTのシュウゾウ・アヅチ・ガリバー「消息の将来」を見てきました。
ガリバー氏の国内大規模個展は2010年の滋賀県立近代美術館のシュウゾウ・アヅチ・ガリバー EX-SIGN以来です。
2010年の個展は現代アートに関心を持った初期に見た展覧会で、その後長く記憶に残る印象的な展覧会でした。
氏の作風は河原温、マルセル・デュシャン、ヨーゼフ・ボイスなどに代表されるコンセプチュアルアートに分類されるものです。
同ジャンルの作家の展覧会はもとより動員数の少なさから日本では大型展が少ないのですが、彼の展覧会はその中でももの派などと比べても企画されることが稀です。
それというのも具体的な見ごたえのある大型展示作品がない(あっても古い)ことや、一見して作品にまとまりが見られないことが原因だと思われます。
李禹煥や菅紀志雄、河原温などと比べると彼は見てすぐ分かるようなトレードマーク的な作品があまりなく、似たジャンルの作家に比べても取っつきにくい印象です。
滋賀県の個展の際のカタログによると、彼の作風には自らを他のものに置き換えた作品が多く、河原温の手触り感を無くした日記絵画を彷彿させます。
彼の作品のうち最もインパクトのある「肉体契約」はガリバー氏の死後、彼の身体を80に分けて販売するというものです。
滋賀県の展示ではこの巨大なテーブルに契約書等が置かれたインスタレーションがありましたが、残念ながら今回の展示では未出品でした。
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー「S.G.B ONE EYE」
これ以外にも彼は自分と同じ体重のステンレスの球体を作って海に沈めるプロジェクトや、自分の眼球を印刷した紙幣を作ったり、自らの肉体を題材にしながら乾いたユーモアを感じる作品を多く作っています。
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー「甘い生活」
似た傾向の作品で、遺伝子を扱った作品群があります。
「甘い生活」はベッドと巨大な印鑑を中心にした巨大インスタレーションです。
ベッドの枕元にはティッシュまで置いて「性交」を強く感じされる一方、壁には「A」「T」「C」「G」がランダムに書かれた2つの印鑑を重ねて押しており、性交が遺伝子のかけ合わせに過ぎないことを過剰に詳らかにしています。
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー「甘い生活 おとめ座」
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー「男と女 愛することができる」
これ以外にも性交を露骨に彷彿させながら、どこか乾いた印象の作品が多く出品されていました。
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー「デ ストーリー」
ダミアン・ハースト氏の作品がそうであるように、現代アートは現代人にとってもっとも関心ごとであるお金と生命を取り扱うと受けるそうです。
そういった意味で「デ ストーリー」も興味深い作品です。
「立つ」「座る」「寝る」に対応した3つの連結された箱(と「立つ」の箱に繋がっているトイレ)に10日間籠るというものです。
箱に取り付けれらたスピーカーからガリバー氏の心臓音が増幅して聴こえることで、見えない彼の存在を感じ取ることができます。
新作も展示されていたということですが、どちらかというと非常に懐かしい思いで鑑賞しました。あれから12年経ち、同じ作品を色々感じることは異なり、アートの奥深さを考えさせられました。★★