• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」

府中市美術館春の江戸絵画まつり へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで【2019年3月16日(土曜日)から5月12日(日曜日)まで】を見てきました。

 

へそまがりの例として禅画やヘタウマがあげられていますが、主題はそこではありません。

上手く描けるのにあえてヘンな描き方をしている作品が多かったです。

どんな作品が集まっていたのか、特に心に残ったものを並べてみました。

 

次点.糸井重里原作・湯村輝彦画「情熱のペンギンごはん」

糸井重里原作・湯村輝彦画「情熱のペンギンごはん」

いわゆるシュール漫画。古典絵画の中には現在の芸術家や漫画家に似たものはたくさんありました。

昔も目立つためにあえてヘンな描き方をした人がたくさんいたのかもしれません。

 

10位.春叢紹珠「皿回し布袋図」

春叢紹珠「皿回し布袋図」

神様の中でも布袋さんはユーモラスな姿から絵の題材になることが多く、しかも絵の中では結構大変な目に会っています。

これは一文無しになった布袋さんが大道芸で稼いでいるという図です。

その状況もさることながら、極端に省略された描き方にも注目です。皿回しといいつつ全く動きを感じないのが独特です。

 

9位.白隠慧鶴「すたすた坊主図」

白隠慧鶴「すたすた坊主図」

冗談に観たいな名前ですが、すたすた坊主は実際江戸時代に実在しており、裸に注連縄だけの姿で踊る物乞い坊主のことを指します。

しかし絵からは単に酔っぱらって裸踊りをするおやじにしか見えません。

すたすたの語源は不明ですが、絵からもまさにすたすたって感じが伝わります。

8位.遠藤曰人 「杉苗や」句自画賛

遠藤曰人 「杉苗や」句自画賛

俳句に絵を付けた掛軸です。

足をハの字に広げた鶴が全く同じ背格好で3羽並んでいます。

自然界ではありえない状況であり、非常に漫画的だといえます。

鶴のシンプルな顔の造作も面白いです。

7位.白隠慧鶴「蛤蜊観音図」

白隠慧鶴「蛤蜊観音図」

八百万の神的状況を描いていると思われますが、それぞれの神はその信仰の対象を頭にのせているのみでむしろ幼稚園のお遊戯会を思わせる絵になっています。

 

6位.雪村周継「竹虎図」

雪村周継「竹虎図」

出品作の中には大型の絵画もありました。

虎や竜は迫力を強調して描かれることが大半ですが、中にはあえてそれを外して描くこともありました。丸顔に丸い目、殆ど描かれない爪、ふさふさと柔らかそうな毛皮という要素は虎よりむしろ愛玩用の家猫を思わせます。

これはこれで需要がありそうです。

5位.白隠慧鶴「布袋図」

白隠慧鶴「布袋図」
解説によると布袋さんが指で字を指示しているのが斬新とありました。

が、それより3等身しかない汚いおやじにしか見えない布袋さんの描き方に衝撃を受けました。

見ていて思い出したのが、現代芸術家のしりあがり寿さんの作品です。

へそまがり絵画って普通の絵画よりよっぽど現代に影響を及ぼしているかもしれません。

4位.徳川家光 「兎図」

徳川家光 「兎図」

江戸幕府の3代将軍家光の絵画です。

解説によるとうさぎのふさふさぶりを丁寧に描いているのに対して顔などの描き方が独特過ぎることを指摘。将軍は当時の一流の絵師から指導を受けていたにも関わらず何故?と訝っていました。

 

しかしなんといっても将軍様。絵師の指導ごときに従って描くとは思えません。

僕は将軍の帝王学が反映された独自性が働いたのでは?と考えました。

 

いっぽう家光といえば幼少期に弟と将軍の座を争ったりして、あまり幸福な家庭とは言えませんでした。その影響は成人してからもその弟を殺したり、衆道に走ってなかなか世継ぎが生まれなかったり色々問題を起こしました。

そんな精神の状態がこの不気味さに反映されているのでは?と思いました。

 

ところでこれらの絵画は家臣にへの褒美として活用されてもいたようです。そう考えるとこれは単なる家臣への嫌がらせでは?とも考えられます。

 

3位.徳川家綱「闘鶏図」

徳川家綱「闘鶏図」

3代将軍の息子、4代将軍家綱の作品です。

ヘンであることは変わりありませんが、ベクトルが全く違います。病的な部分がなくなり、ユルくヘタウマな作品に仕上がっています。

絵の先生たちはむしろ家綱の作品を面白がって自由に描けとけしかけていたのでは?と妄想します。

家綱といえば穏やかな人物像が記憶に残っていますが、絵からは動物好きの要素も感じられます。

 

2位.長沢芦雪 「猿猴弄柿図」

長沢芦雪 「猿猴弄柿図」
果物を独り占めする嫌なエテ公を描いています。

そのいやったらしい表情が最大の見どころです。

また下の小さい猿は上のエテ公に今にも蹴落とされるかもしれず、そんな物語も感じさせます。

 

1位.海北友雪「雲竜図襖」

海北友雪「雲竜図襖」

本展覧会最大の作品です。竹虎図と同じく、竜を極めてユーモラスに描いています。

やはり丸い目やふさふさのヒゲなどで動物としての竜の愉快さを強調しています。

また内側に折れ曲がった角は襖に無理やり閉じ込められているかのようにも見えます。

 

これ以外にも「え!?こんな題材で!?」という作品が100点以上も集まっており、非常に見どころが多かったです。

わざわざ府中まで見に行く時点でへそまがりな気もしますが、その価値は十分にあります。★★★

コメント一覧

2019年展覧会上半期ベスト – 博司のナンコレ美術体験2019年7月3日 12:17 AM / 返信

[…] 3位.へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで […]

★★★日本の真の伝統「日本の素朴画」 – 博司のナンコレ美術体験2019年8月17日 10:48 PM / 返信

[…] 奇想の系譜展やへそまがり日本美術に続くともいえる展覧会です。ただこの2つは著名人や高名な画家が描いた作品がメインだったのに対して、こちらはよくこんな絵が捨てられずに残っていたなという低クオリティの作品ばかり(失礼!)。 […]

2019年展覧会ベスト – 博司のナンコレ美術体験2020年1月6日 10:29 PM / 返信

[…] 4位.へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで […]

OnHax2020年8月20日 6:36 PM / 返信

OnHax [...]just beneath, are several absolutely not connected sites to ours, nonetheless, they may be surely worth going over[...]

onhaxx.me2020年8月22日 8:17 AM / 返信

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★石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか – 博司のナンコレ美術体験2021年1月11日 10:14 PM / 返信

[…] また後半はイラストを使った作品も。ヘタウマなどイラスト文化自体をパルコが引っ張っていただけあり、様になっていました。 […]

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