広島市現代美術館に行ってきました。
設計は黒川紀章氏。
場所は広島市内の比治山公園。市の中心部にある小高い山で、市で最も早く整備された市民公園でもあります。
市はここに様々な文化施設の建設を計画しましたが、実現したのは現代美術館とこども図書館のみです。
比治山の東側からアクセスする場合、比治山スカイウォークなる動く歩道とエスカレーターを利用できます。
これは麓のショッピングセンターの2階と直結してるので、買い物のついでに美術館に行くこともできます。
このスカイウォークのデザインもなんとくなく70年の大阪万博のノリなデザインで、黒川さんっぽいです。
美術館の多くは公園内にあることが多く、黒川さんの美術館も埼玉県立近代美術館から国立新美術館まで公園内にあるものばかりです。
その際黒川氏が気遣ったのは公園と美術館を調和させることで、どの建物も地下を活用し高さを抑えることで景観を壊さないよう配慮しました。
中でもこの美術館はそれが濃く表れています。建物の高さが比治山の稜線を超えないように山を掘って地上2階、地下1階の建物とした結果、麓からはまったく美術館が見えないようになりました。
また近づいても美術館がよく見えるのは正面からのみとなっています。
建物の形状は江戸時代の蔵が複数集まったような形をしています。
仕上げは石垣、タイル、アルミと上に行くに従って新しい素材を用いることで歴史の重層を表現しています。
エントランスの円は入り口方向が欠けていますが、その方向は原爆の爆心地を指しています。
円が欠けていることと、その中心に彫刻や噴水がないことは西洋文明にたいするアンチテーゼだそうです。
建物の左右には何の脈絡もなくクレーンが取り付けられています。工業都市広島のオマージュでしょうか?
ちなみに手前の丸い穴は地下展示室に光を取り込む光庭です。
それ以外にも大砲のような窓などデザインは、土地に関係あるものもないものも色んな意味が含まれているそうです。
美術館の周囲を一周するといろんな形状の窓を発見できて結構面白いです。
黒川氏の美術館は彫刻の配置も特徴的で、建物と一体になっていることもあります。これも一種の共生の思想だと考えられます。
特に井上武吉氏は埼玉県立近代美術館でも黒川氏とコラボしており、美術館の動線と一体になった彫刻を設置しています。
ちなみに井上氏の彫刻は内部のらせん階段にも合体して設置されています。
本建築は日本建築学会賞を受賞した建築です。
60年代から活躍する黒川氏にとっては遅すぎる受賞ですが、それでも氏にとって重要な建築だったようで、過去の氏のあらゆる建築や理論が含まれています。
例えば窓の形状は過去作の国立文楽劇場やワコール麹町ビルと同じですし、
比治山の森との共生は共生の思想、井上武吉の彫刻は中間領域、蔵が集まってできているのは外観だけですが、道の建築です。
黒川氏の美術館建築の集大成にふさわしい見どころ満載な建築だと思います。★★★
黒川紀章ベスト10 – 博司のナンコレ美術体験2019年5月11日 7:55 PM /
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