2018年11月20日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★芸術祭とともに「磯辺行久の世界―記号から環境へ」

越後妻有清津倉庫美術館(新潟県)の「磯辺行久の世界―記号から環境へ」【2018年7月29日(土)〜2018年9月17日(日)】を見てきました。

建物は絵本と木の実の美術館などと同様、廃校になった小学校を改装しています。

大型化した現代美術作品の展示と保存を兼ねるという意味で「倉庫美術館」を名乗っていますが、校舎と体育館の大空間をそのまま生かしたインスタレーション作品の展示が持ち味です。

敷地に建つ黄色いポールは磯辺行久氏の新作「清津川はかつてここを流れていた」です。

 

磯辺氏については1960年代ごろの「ワッペン絵画」と、近年の環境アートがどうも結びつかず、どうもすっきりしない思いでした。

始めの部屋は「エコロジカル・プランニング」と題されており、美術館というより地学研究室の資料室のよう。

磯辺行久「エコロジカル・土木マップ」

磯辺氏と大地の芸術祭の関わりは深く、ディレクターの北川フラム氏が磯辺氏に第一回芸術祭の準備のために越後妻有の特性調査を依頼したことに始まります。

越後妻有は土地は東京23区より広く、高低差は標高80~2,145mまであります。実際駅前のキナーレは蒸し暑く、清津峡はかなり涼しいです。

 

この調査結果は当時の雑誌「建築文化」にまとめられました。日本ではアースワークはいまだにそれほど市民権を得ていませんが、磯辺氏が学んだアメリカではこの学問を生かした大規模なアートが多数制作されています。

 

磯辺行久「海流資源図・ダイマキシオンマップ」

エントランスでは、巨大な世界地図にキューブが巡らされ、エンドレスで水が流れています。

海洋資源の流れを示しているのでしょうか?

ちなみにここの真上はガラスブロックと鉄骨を使った吹き抜け空間になっています。

小学校→美術館に改装するにあたって意匠的な奇抜さはあまり見られませんでしたが、ここは強調したいと思ったのかもしれません。

 

うって変わって2階は磯辺氏の初期の作品群が展示されています。

磯辺行久「work」

どこかで見たような作品もあるのですが・・・

磯辺行久「work」

ドキモを抜かれたのが天狗とアトムのお面の集積。アルマンのパロディでしょうか?アトムは微妙にパチモンくさくて余計に不気味です。

 

ワッペン絵画も多数展示されています。

作品はワッペンからさらに大型化していきます。

磯辺行久「work’65」

巨大な箪笥のような作品の表面に絵が描かれています。

箱の中身は前述のワッペンとほぼ同じです。戸は左右だけでなく上下に開くものもあります。

磯辺行久「work64_5

この複雑怪奇な作品を最後に、磯辺氏は渡米、環境アートへの道をひた走ります。

 

2階最後の部屋では大地の芸術祭の一連の作品を紹介されています。

磯辺行久「川はどこにいった(プラン)

磯辺行久「川はどこにいった

磯辺行久「プランドローイング

磯辺行久「信濃川はかつて現在よりも25m高い位置に流れていた

これまでの作品の実際とプラントの違いが比較できるのが楽しいです。

 

順路は渡り廊下で体育館に続きます。

体育館は本来の壁の前にコンクリ打ちっぱなしの壁を設けています。

 

磯辺行久「潮流の中の島々

先ほどの「海流資源図・ダイマキシオンマップ」以上に巨大なこの作品は、瀬戸内芸術祭の出品作品。まさかこんなところで見れるとは。

 

磯辺行久「Floating Sculpture 2018

そういえば磯辺氏にはエア・ドームの作品もありましたね。今回は流石に出品されていませんが・・・

 

磯辺行久「Repetoire de L’origine Aquife

解説では磯辺氏の一連の作品は連続性があるとされていますが、確かに近年の作品でも初期のグラフィカルな部分は時折顔を出します。

 

過去作と、空間を最大限に生かした巨大作品が同時に見れるお得な展覧会です。是非本展覧会を通して大地の芸術祭の意義と精神を感じてほしいです。★★★

 

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