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国立西洋美術館の現代展?常設展「リヒター/クルーベ」

国立西洋美術館(上野)の「リヒター/クルーベ」【2018年6月19日(火)~2019年1月20日(日)】を見てきました。

見てきたといってもこの企画は常設展示室の一角にゲルハルト・リヒターの絵2枚と

ギュスターヴ・クールベの絵1枚合計3枚を、リヒターの家に飾られている配置通りに展示しただけのものです。

中世のフランス人写実画家ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)と高度に抽象化された作品が多いドイツ人のゲルハルト・リヒター(1932-)は何の関係もなさそうです。また解説によるとリヒターがクルーベの絵を手に入れたのも偶然の産物で、リヒターがクルーベの影響を受けたという研究もないそうです。

ギュスターヴ・クールベ「狩猟者のいる風景」

解説によるとクルーベの荒々しいタッチはリヒターに似ていると書かれていましたが・・・

ゲルハルト・リヒター「シルス・マリア」

実際に見て見ると両者は写実と抽象という違いがあるようで、風景の手触りを再現せず写真のように均一に描くという共通点があるように思いました。違いは風景が鮮明かピンボケしてるかしかないように感じます。

ゲルハルト・リヒター「抽象絵画」

そのようにして見るとこの作品は上記の作品から背景をはぎ取ったものとみなすことができます(製作年は逆転していますが・・・)。

 

ル・コルビジェ「国立西洋美術館」

さて常設展では2016年の本建築の世界遺産登録を記念してか、建築の展示も行われていました。

ル・コルビジェ「国立西洋美術館」

コルビジェの作品とされていますが、実際は彼は一度現地を視察しただけで、実施設計は弟子の前川國男坂倉準三吉阪隆正が行っています。そのためコルビジェの作品としてはかなり傍流です。

実際見て見ると19世紀ホールと呼ばれる常設展入り口部分などは天井採光など面白い形をしていますが・・・

他の部分は閉鎖されっぱなしの小展示室や一階に抜ける階段・・・

ヘンな位置にある柱など意味不明な部分や、活用されていない部分が目立ちます。

コルビジェの名が重すぎて自由に設計変更できなかったのか、それとも3人の弟子の合作ということ自体が無理があったのか?

前川國男設計の新館との間にある庭も出れなくなっており、館内から眺めるのみです。

一方正方形の建物の2階をぐるっと回るのは坂倉準三の神奈川県立近代美術館(鎌倉館)と同様で、あちらの拡大版と思えば面白いかもしれません。

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