栃木県日光市のメルパルク日光霧降(現・大江戸温泉物語 日光霧降)に行ってきました。
ロバート・ヴェンチューリの日本で設計した建物です。
彼はポストモダン建築の理論家として有名ですが、その主張はラスベガスに代表される広告塔のような看板建築を称賛するというもので、彼自身の建築も自身で「退屈」と表現するようなものでした。
一方、本建築はヴェンチューリがインタヴューに応えて、自身で初めて自分のやりたいことが十全にできた建築だと述べているものでもあります。
自身の建築が退屈というヴェンチューリがやりたい放題やった建物とはどのようなものなのか?
外観上の特徴はごく普通のホテルに日本式の屋根が貼り付き、さらに長手方向を連続して貫くというものです。
これはどこにもない印象的な光景ではありますが、看板屋根に入る黄色いラインなど、これが偽物であることを過剰に表現しています。
そのため露悪的な印象が強いです。
身近手方向の壁面のパターンはモンドリアンの絵画を模したものだといいます。
ピート・モンドリアン「大きな赤、黄、黒、灰、青色のコンポジション」
ピート・モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」
彼は日本分化を分析し、モンドリアンの絵画との共通点を見出したとのことですが、観光客を楽しませるというより、ハイソな知的ゲームにとどまっているのは残念なところです。
彼が「ヴィレッジストリート」と呼ぶ共用空間が本建築のメインです。
この部分は経営形態が変わっても比較的よく保存されていました。
写真映えする空間で、この空間をバイキング式のレストランに活用するというのも一定の効果を上げているようです。
上部には電信柱の変圧器、高速道路にある電灯が表現されており、田中同士は伝全を模したロープで繋がれています。その下部には造花、着物などの伝統模様をあしらった幟が付いています。
この伝統的な文様には現代日本のネオンサインが混ざっています。
ご丁寧にネオン菅が貼り付いています。
この空間を地上から見ると、従来あったポストや提灯の看板が無くなっています。
これらは邪魔だから撤去したということでしょうが、結局誰もヴェンチューリの考えは理解できないということでしょう。
一方別館はオープン当時はレストラン付きプールでしたが、現在は「日光VIVA!ハワイアン」として夏季限定でオープンしているようです。
内部は天井に葉っぱの看板が貼り付き、表は緑、裏は黄色になっています。
これは紅葉を表現していますが、経営者にハワイと解釈されるのは・・・
まあそう思うのが平均的日本人で、むしろ日本の俗物ぶりと、アメリカ出身のヴェンチューリの本質を見抜いていると思います。
駐車場とプールの間にある奇妙な壁は日本の垣根を表わしているとのこと。
コンクリで垣根を表現する違和感はちょっと面白いです。
花は夜はライトとして機能するそうですが、現在は使っていないのかも。
ビックリホテルとしてもアートホテルとしても中途半端で、評価のしようがないというのが正直なところです。とはいえアメリカ本国にもない奇妙な風景ではありますが・・・