千葉市美術館の「宮島達男 クロニクル 1995-2020」【2020年9月19日[土] – 12月13日[日]】を見てきました。
スターズ展でも紹介され、にわかに再注目された感がある宮島氏。
ファーレ立川では作品が高すぎて修復できないという話を聞きました。
国内作家とはいえ、地方都市の美術館が作品を集めるのは大変なのではないでしょうか?
今回の展覧会は千葉市美術館は開館した1995年から2020年までの作品を振り返るものです。
とっつきにくい抽象的な作風なイメージがありますが、1階で展示されているのは床面のカラフルなモニターの上を歩くというもの。
モニター上にもカラフルな数字が流れており、人が通ると何となく集まってくるように感じます。
このように表現は抽象的でもポップで楽しい作品が多かったです。
会場に入って始めに見れる作品はパフォーマンス系の映像作品。
これは顔の上の数字が変化していくというもので、デジタルの作品のイメージが強かった宮島さんにとっては新機軸です。
これも映像作品で、9から1までカウントダウンし、0は液面に顔をつけて表現するというもの。
これは宮島さん本人がパフォーマンスをしているバージョンです。
液体はこの作品では墨汁を使っており、映像が進むにつれて宮島さんも服も真っ黒になっていきます。
呼吸ができない状態に持っていくことで0を死に見立てているのでしょうか。
この作品は美術館の休憩スペースの窓に設置されています。
すりガラスが変化する数字の部分だけ透けて見えます。
この作品によって、誰にも使われない野外スペースやその飾り手摺があらわになっているのが面白いです。
PCに自分が死ぬ日付を入れると、その時間までの秒数が表示されるという作品です。
数字の普遍性や、生命をダイレクトに感じさせる作品です。
展覧会の中間地点には、宮島さんが尊敬する先輩アーティスト5人の作品を展示し、その手前のガラスに数字をプリントするというコラボ展示がありました。
ガラスケースという旧態然とした空間を上手く利用した展示だと感じました。もっともよく見る作品ばかりでしたが・・・
展示後半の明るい部屋にはよく知られた宮島さんのデジタルカウンター作品が並びます。
9枚の鏡にランダムに変化する数字が表示されるという作品です。
鏡にはそれぞれ壁から傾けて展示されており、インテリアによさそうです。
ぱっと見こちらもインテリアによさそうな作品にしか見えませんが、人工生命の研究者とのコラボ作品です。お互いの数字が連鎖反応を起こすということですが、説明されてもよく分かりません。
見えないところ、分かりにくいところに拘るからこそ、国内屈指の高額作家になれたのかもしれません。
2500個のLEDを使っているとのことですが、作品サイズは126.5cm角に過ぎず、あまりありがたみがありません。
接写した方が面白く映りますね。
タイトルは仏教の生命観から採られており、宮島さんの生命に対する一貫した関心を感じさせます。
鉄道模型にカウンターが取りつけられた作品。
普通に鉄道間にが欲しがりそうな作品で、実際線路を走らせるもかつてあったようです。
タイトルからホロコーストを表現していることが分かります。
特に貨物列車に詰め込まれたカウンターはそのことを強く感じさせます。
この作品からはスペースデブリを連想しました。
こちらもモチーフは「金剛智」とのこと。タイトルは過去の歴史や思想、哲学から採られることが多いようです。
明るい部屋から徐々に暗くなり、最後は真っ暗になります。
直径960mのパネル内に197個の青色LEDが浮かぶという作品です。
本展覧会最大の作品ですが、これは千葉市美術館の収蔵作品。
派手な作品が少ない一方、初期からの最新作までの作品を俯瞰するという意味では面白い試みでした。
宮島氏の作品は冷たい印象がありましたが思いの外楽しめました。★★
最後に。千葉市美術館はリニューアル後初めて行きましたが、それほど広くなっている印象はなかったです。ビル全体が美術館になったとのことですが、実感はワンフロア増えただけといったところです。それでも増床には違いないですが・・・
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