2018年4月26日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★膨大な仕事と広大な世界観「生賴範義展」

上野の森美術館生賴範義展THE ILLUSTRATOR 〜 

生賴範義氏はSF界隈で人気のイラストレイターです。2014年から住居が合った宮崎で2回その後明石と大分で1回展覧会がありましたが、今回ようやく東京で展覧会が開かれました。

会場の始めには生頼氏イラストの新聞広告を復元したと思われるパネルが大量に展示されています。

SFや軍関係、歴史ものはお馴染みですが・・・

面白いのはそれとは無関係の作品も多くあることです。

これらは生頼氏のイラストレーターとしての地力を示すとともに、与えられた仕事は何でも真面目にこなすという性格も業界に広く知られていたせいだと思われます。もっとも軍関係より社会派作品の方が描くのは楽そうですが・・・

次の部屋では宮崎でも展示されたブックタワーがあります。ブックオフでもなかなか見かけないような貴重な本もあります。子供向けの本などもあり、生頼氏の仕事の幅広さを一目で把握することができます。

「ゴジラ」

周囲にはゴジラスターウォーズをはじめとするポスターが展示されています。

「メテオ」

SF作品の特徴としては、資料からイメージを膨らませ、原作を上回る迫力あるシーンを描くことです。「メテオ」では原作にはない「マンハッタン島に巨大クレーター」を描いています。このような大胆な手法により業界関係者にファンを獲得していったと想像できます。

「地球防衛軍」

あまりにもポスターがかっこいいので、実際の作品に失望することも。映画でも実現できない夢を現実化したとも評価できます。

「スターウォーズ帝国の逆襲」

スターウォーズは国内ポスターがウケて全世界版として起用されることになります。前景に主人公勢を一か所に集めて、後景に大きく悪役を描くという構図は他のイラストレーターも真似することになります。

小松左京「果てしなき流れの果に」

最も多くのイラストを担当したのが小松左京です。結構意味不明のイラストも多いのですが、正直小松さんの小説自体が意味不明なのも多い(笑)ので、まあちょうどいいのかなと。

小松左京「明日泥棒」

ハードSF作家として評価の高い小松さんですが、実はナンセンスSFも多く執筆しています。それらの生頼さんの仕事を見ると彼の柔軟さと職能の高さを実感できます。

小松左京「最後の隠密」

実はSFと時代小説は相性が良く、多くのSF作家が両方を書いています。このような世界観の混在も生頼さんの得意とするところです。

森村誠一「太平記」

こちらは純然たる歴史ものなのですが、構図はSF作品と共通しているのが興味深いです。

豊田穣「雪風ハ沈マズ」

軍関係も本来あり得なかった日本軍の活躍を描いているものが多数ありました。

ジョージ・オーウェル「1984年」

不思議だったのが「1984年」の仕事です。原作とは全く無関係の生物群(?)が描かれています。原作が既によく知られていて想像が膨らまなかったのと、高度な管理国家をイラスト化しても売れないと考えたからでしょうか?

ユリア・ドムナ

おそらく本人も非常にノッて描いたと思われる雑誌「SFアドベンチャー」の仕事です。古今東西の女神的イメージを持つ女性とSFの組み合わせが何十枚も続き、生頼氏の教養の深さがよく分かります。

DAK TO 1967「ベトナム」

最後は生頼氏が注文ではなく個人的に描いていた油絵の展示です。生前の生頼氏の純粋絵画を含む個展は2回のみで、イラストレーターとして成功しても画家としては不遇だったといえます。

「我々の所産」

これらの作品は技量は当然、世界観も大変魅力に溢れています。アトリエには大量の未完成作があるらしく、期限と顧客が明確な注文作品と違って、自分のためだけに描く作品はこだわりが無限大に広がって発表のタイミングを逃してしまったのではないかと思われます。

「破壊される人間」

これらの大作を生頼氏の疎開先であった鹿児島県川内市がひっそりと所有していることからも、まだまだ生頼氏の未発表作品は出てきそうです。今後の展開も楽しみです。ナンコレ度★★★


生賴範義展THE ILLUSTRATOR

上野の森美術館

 〜 

*会期中無休
開館時間:午前10時~午後5時
*最終入場閉館30分前まで

一般・大学生 1,600(1,400)円

高校生・中学生 1,000(800)円
※( )内は10名以上の団体料金
※ 小学生以下は無料

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