Bunkamuraは2017年にソール・ライター展をやったばかりで、3年経たずに同じ作家を扱うのは異例です。それだけソール・ライターが日本人にウケたということでしょう。
展覧会とライターの写真の特徴を考えてみたいと思います。
そこには優れた写真とは何かという普遍的なものも含まれているように感じます。
ライターの今回紹介された写真はニューヨークで多く撮られています。
しかしランドマークになる巨大な建物などニューヨークと分かるものが映っていることは非常に少ないです。
日曜美術館の解説によると、ライターの写真は自宅の周辺の非常に狭い範囲で撮られたもののようです。
ニューヨークという大都市で撮影しておきながら、日常のちょっとした謎や発見を撮っているのが特徴です。
ライターの構図は写真の教科書に載ってないような、特徴的なものです。
いわゆる撮影する対象を絞り込むフレーミングの手法ですが、ときに画面の2/3以上がフレームになるようなインパクトのある写真が散見されました。
ライターが登場したころは白黒写真こそアートであり、カラー写真は低く見られていました。
しかしライターはカラー写真の面白さを前面に打ち出した作品を発表しました。
当時は即物的なものとして軽蔑されたかもしれませんが、現代になってその面白さが改めて認識された形です。
ポイントとなる色は赤が多く、傘、信号、床屋の看板などが多用されます。
このようなモチーフを多用するとパターン化しそうなものですが、そう見えないところが流石と感じます。
メインビジュアルに使われているように、ライタ―の写真は雨模様のものが多いです。
雨の日も撮影に出かけるという仕事熱心さもありますが、よく見ると雨の日は室内から映したものが多いです。
これは半地下の喫茶店などから映したもののようです。
ライターが都市生活を楽しみながら仕事をしていたことが分かります。
また雨粒や映り込み、光の反射など、ライターの写真の面白いところが凝縮された写真が多いです。
これはライターに関わらず言えることですが、人物を撮った作品は視線によって物語性や謎が含まれていることが多いです。
ミステリー小説でなくても何らかの謎が含まれている方が物語が盛り上がるります。
特に複数の人物が含まれる作品は面白いです。
今回の展覧会ではライターの私生活を紹介する作品もありました。
ポイントになるのは妹のデボラと恋人のソームズです。
家族がライターが写真家になるのを反対する中、唯一応援してくれたのがデボラでした。またデボラは後に精神障害で生涯入院することになるように、繊細な神経の持ち主でした。
写真からはそのような死の影や病的な部分が伺えます。
一方ソームズはライターの終生のパートナーであった人物です。展覧会には彼女の作品も展示されていました。
また鏡などに自分が映り込んだ写真も多数あり、これらもライターの人間性をうかがわせる貴重な写真です。
一人の写真かでありながら色んな事が勉強できるいい展覧会でした。★★★
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