• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★まだおふざけが足りない「筒井康隆展」

世田谷文学館の「筒井康隆展」【10.06 – 12.09】を見てきました。

筒井康隆氏は1960年に同人誌を発刊して以来、SF小説の第一世代として全く新しい作品を作り続けてきました。

1ページ1分というルールで書かれた「虚人たち」、使える文字が段々減っていく「残像に口紅を」、文房具とオコジョが戦争する「虚航船団」などアイデア勝負の作品を多数執筆しています。


一方直木賞の連続落選を小説内で復讐した「大いなる助走」など小説の枠に収まらない物議を醸す作品も多いです。

俳優としても活動するなど小説以外の活躍も多く、そのあまりも広すぎる守備範囲のため展覧会としてまとめるのも大変だったと思います。

 

SF関連の展覧会の要望はかなりあるらしく、そのため生前の小説家の展覧会というかなりレアな試みが今回実現しました。

 

筒井康隆展カタログより

展覧会を構成したのはギャラリー間で個展をしたこともあるトラフ建築設計事務所

御年82歳の筒井氏の長いキャリアと旺盛な活動を表現するため、ベニヤ板に直接年表を貼り付け。

筒井康隆展カタログより

この年表が展覧会の入り口から出口までずっと続きます。

個展に年表はつきものですが、それが入口から出口までずっと続いているのは前代未聞です。

またこの年表は所々高さが変わって向こう側に抜けれるようになっています。

年表の裏にも展示物があり、かなり自由な導線を形成しています。

 

筒井康隆展カタログより

文学館と言えばナマ原稿ですが、僕はこういった展示にはあまり感心しません。

読みやすいタイプされた単行本があるのに、なぜわざわざ読みにくい手書きの原稿をありがたがるのか?

ただ筒井氏の原稿は図や絵がふんだんに盛り込まれており、もはや芸術作品の域に達しています。

画像は虚航船団のものです。

 

他に注目すべき展示は筒井康隆作品マップ

初期のSFやスラップスティックからパロディ、純文学、歴史、実験小説などとどんどん派生していった作品世界を分類しようという試みです。

必ずしも納得できない部分もありますが・・・

 

展覧会の最後には筒井氏の蔵書を売るオークションコーナーや・・・

映像作品コーナーも。

 

因みにカタログ自体も仕掛けがあります。

カバーを展開すると、作品タイトルがずらっと並ぶミニポスターになります。

 

筒井ファンには必見ですが、この面白さがファン以外に伝わるかは不明です。

俳優など色んな活動をしている筒井氏によってしても、文字情報が大半になってしまうのは文学館の限界でしょうか?

筒井氏の作風からして、もっと混沌とした空間になっても良かったのでは?★

コメント一覧

★沈没をシュミレーション「小松左京展D計画」 – 博司のナンコレ美術体験2019年12月11日 3:51 PM / 返信

[…] 2018年の筒井康隆展に続いてまたしてもSF関連の展示です。 […]

★沈没をシュミレーション「小松左京展D計画」 – 博司のナンコレ美術体験 にコメントする コメントをキャンセル