森美術館のパンデミック以降のウェルビーイング 地球がまわる音を聴く【 2022.6.29(水)~ 11.6(日)】を見てきました。
ヴォルフガング・ライプ「ヘーゼルナッツの花粉」
メインビジュアルに使われたライプ氏のインスタレーション。
顔を近づけると花粉の香りがします。
トークショー直後だったため、ライプ氏本人が後ろにいます。
様々な花粉をある面積に均等に撒くというインスタレーションで、普通はライプ氏本人がやるのですが、今回は森美術館館長がレクチャーを受け行いました。
このあと、ライプ氏が一晩かけて撒き直したとのこと。
ライプ氏の同様の作品はヘーゼルナッツ以外にマツ、タンポポなどがあり、特にタンポポは変色が激しく、一度作品として使えばリサイクルは不可とのこと。
花粉はライプ氏が田舎の私有地で自ら採取するそうです。
1977年より再生策が繰り返されており、これまでも300か所以上で展示されました。
今回のテーマは自然だけあって、美術館の天井の一部、このインスタレーションの上が解放されていました。そんなところが空くのは知らなかったです・・・
ヴォルフガング・ライプ「ミルクストーン」
その隣に置かれた作品は見た目は滑らかなタイルにしか見えませんが、表面が凹んだ大理石に零れるギリギリまで牛乳を注いだインスタレーション。
大理石はブルーホワイトというマケドニア産のもの。
こちらはライプ氏のレクチャーを受けたスタッフが毎朝牛乳を注ぎ直しています。
表面張力を用いてギリギリまで注ぐのがポイントだとか。
同じように食品を使った作品に米を積み上げた作品もあります。
ヴォルフガング・ライプ「べつのどこかで―確かさの部屋」
同じく、ライプ氏による蜜蝋を敷きつめたインスタレーション。内部は濃密なにおいがします。
ライプ氏に関しては、近くのケンジタキギャラリーで同じく蜜蝋の作品が見れます。左右非対称の形状が気になります。
かなり繊細な作品のようですが、これも現地で再制作しているのでしょうか?
触ることのできない自然物の集積に注目することで、普段素通りしていたものが意識させられます。
小泉明郎「グッド・マシーン バッド・マシーン」
人だかりができていた人気作品。
モニターに表示された人物と服を被せられたぎこちなく動くロボットからなる自動劇です。
演者は催眠術を掛けられながらセリフを言うのでセリフと表情があっていません。
どこからが自分の意志なのか?を考える作品でしょうか?
青野文昭「八木山橋」
青野氏は昔、吉祥寺美術館の個展を見ました。
家具の廃材をリサイクルした大型インスタレーションです。
異様なまでの作り込みが不気味です。
付喪神のように長年使った家具にやどった霊性に形を持たせたものに見えます。
掘尾貞治氏のインスタレーション
青野氏の作り込みに対して、堀尾氏の作品は物量がすごい。作品数は10万点もあり、展覧会、パフォーマンスなどを年100回も行うという非常に清涼区的な活動をされてました。
掘尾貞治「一分打法」
一分で作成するドローイングなどその手法は徹底していました。
金沢寿美「新聞紙のドローイング」
鉛の匂いが濃厚な本作は新聞紙を塗りつぶしたものをつなぎ合わせただけの作品。
模様に見えるものは全て塗り残し、つまり新聞紙本来の記事や写真です。
使われている新聞が新聞業界の中でも特に凋落が激しい朝日新聞であることが作者の問題意識の所在を感じます。
それなりに面白い作品はあったのですが、結局ウェルビーイングとは何だったのか?
森美術館のグループ展は面白いものが多いのですが、どうも意識高い系の展示は合わないというか、主張があやふやになっていると思います。★