国立近現代建築資料館(上野)の安藤忠雄初期建築原図展【2019.6.8[土]-2019.9.23[祝・月]】を見てきました。
去年大規模な展覧会があったばかりなのにまた安藤かよ!とも思いましたが、予想に反して平日にしてはなかなかに盛況。なんだかんだ言って大高正人や吉阪隆正より安藤の方が人を呼べるのかもしれません。
国立新美術館と違って地味な展覧会になるかと思いましたが、そこはサービス精神旺盛な安藤さん。他の展示の時より豪華な感じがしました。当然出てくる資料も違います。初期の図面が中心と思いきや模型も沢山出てましたし・・・
建築別に気になった建物をピックアップしてみました。
「領壁」とはこの家の長手方向の長い壁のこと。両サイドが居住空間で真ん中が中庭。住吉の長屋と同じスタイルですが、こちらは開放型。
住吉の長屋といい、安藤さんは縦長の狭小住宅が得意なのかもしれません。
といっても開放してるぐらいだから土地がないわけではなさそう。
敢えて狭い空間に住むという試みでしょうか?
図面も情報過多でサービス精神旺盛?
安藤さんの建物は初期からほとんどコンクリート打ち放しばかりですが、たまに違うのもあります。
といってもガラスブロックなのは中庭であり、外観はやっぱりコンクリート打ち放しらしいです。
ガラスブロックの中庭は下に行くほど狭くなっており、空間を掘り込んでいくイメージです。
中庭に同じくガラスブロックで囲まれた半円状のらせん階段が食い込んでいます。安藤さん的にはやはり中庭には階段なのか?住民がお互い何をしているのかブロック越しにぼんやりと見れるのもポイント。
元々、安藤さんのペーパープロジェクトだったものが、北海道からオファーを受けて実現したもの。
もともとペーパープロジェクトのせいか、非常に抽象的な空間です。
もとのイメージを生かしつつ、周りの実際の風景も見事に取り込んだ建築です。
京都市の高瀬川畔の商業施設です。
殆ど川の氾濫リスクがないことを生かし、ギリギリまで建物を水面に近づけています。
水に近いことをアピールするため、道路側は閉鎖的なデザインにして・・・
河側は色んな高さから河が見れるように作られています。
空間演出が得意な安藤さんの成功例。
神戸の六甲山の斜面に強引に立てられた集合住宅です。
今回のメインビジュアルにも使われているスケッチです。
工事の様子を定点観測した写真もありました。
最頂部には「安全第一」の看板が。
安藤さんの初の集合住宅で、初期のビックプロジェクトなので、自身思い入れがあったみたいです。
ちょっとずつずれて繰り返されるパターンが気持ちいいです。
模型はぱっと見棚っぽい・・・
模型の裏には山の稜線が描かれています。
安藤さんの作品の中でもぶっ飛んだ作品。
兄弟から注文を受けた家で、全く同じ家を鏡像にして2つ作り、ブリッジで繋いでいます。
工事写真も展示されていました。こんなのが作られていたら近所の人もビックリすると思います。
去年の展覧会で実物モデルが展示されたことによって、一躍安藤さんの代表作になりました。
高い精神性を讃える声が高いですが、迷宮化した動線、スリット、やたら狭い通路など安藤さんお馴染みのテクニックも多数見えます。
資料からは安藤さんがその効果を高度に計算していたことが読み取れます。
「誰でも思いつく演出」とも言えますが、やはりそれを認めさせるには相当な努力がいったのだと思います。
この家は安藤さんのごく初期の作品なのですが、注文者が売却した際安藤さんが買い取ったのが始まり。
その後は大淀のアトリエとして増築が繰り返されます。
まず3階が付け足されますが、次に隣地を買い取って隣もアトリエになります。
最後は最上階に2棟を跨ぐ模型室が加わります。
大淀のアトリエⅡはアトリエⅠを壊して新築したもの。
土地の形状が同じなのでⅠとⅡは共通する部分が多いのですが・・・
写真左の吹き抜けが大きな違いです。壁は全面本棚で、吹き抜けの最下層に安藤さんの机があるそうです。
また隣接してアトリエ兼ゲストハウスであるアネックスも作られました。
巨大なクスノキを各階から眺めることができ、最上階にはキャンティレバーで浮かぶラウンジもあります。
住吉の長屋をさらに縦に引き伸ばしたような5階建てです。
中も住吉の中庭が3階に持ち上げられ、住吉では各階2部屋だったのが1部屋になるなど、ますます上に積み上げられています。
2階までは雨に濡れずに行けますが、3階以上へは天井のない階段室を通らなくてはならず、5階の天井の低い子供部屋ははしごで登るなど、安藤さんの言う「住むことへの覚悟」が問われる家です。
大量に作品集が出てる人だけあって、まだまだ掘り起こしができそうな建築家です。色々発見もありました。★★