河内タカさんの「アートの入り口 アメリカ編」を読みました。
以前「アートの入り口 ヨーロッパ編」を紹介しましたが、今回はアメリカです。ちなみに表紙はエドワード・ホッパーの「早朝の日曜日」ホッパーは「ナイトホークス」が好きなんですが、朝もいいですね。ただの床屋の看板が何故か暖かみを感じます。
日本人はヨーロッパの近代以前のアートが大好きなので、アメリカのアートは国内でほとんど紹介されていないといってもいいぐらいです。知名度があるのは本書にも登場するアンディ・ウォーホルとジャクソン・ポロックぐらいでしょうか。
ウォーホルはカラフルな版画作品が有名ですが、元々広告業界の人でそのころの作品はキレキレですね。
アメリカ美術の紹介者もマークロスコ、ジョゼフ・コーネル、フランク・ステラ、バネット・ニューマンなどの優れたコレクションを持つDIC川村記念美術館があるぐらいです。
なので本書はアメリカ美術が無限のフロンティアであることを知る良書だと言えます。ロバート・ゴーバーやゴードン・マッタ=クラークはもっと国内で紹介してほしいですね。
さて、著者の河内タカさんは長年ニューヨークに住んでいた人で、本書は河内さんの回顧録としても読めます。現在もアート界を牽引しているニューヨークのアートシーンを生で体験した生き証人です。
なので例えばセントラルパークにゲートが大量発生したイベントや
フェリックス・ゴンザレス=トレスの広告も生で見ているわけです。
またアメリカ社会について言及したアーティストも多く紹介されています。こういう作品は背景を知っていないと良さが分かりませんものね。
建築好きとしては建物や街の景観について多く言及されているのも嬉しいところです。ハイラインやブルックリン橋、クライスラービルなどは当然観光ガイドにも載っていますが、できれば歴史的背景を勉強してから見に行きたいものです。
映画まで紹介されているのも面白い点です。パリにおける「アメリ」のように映画が都市の魅力を伝える力は侮れません。
アメリカ現代美術家のカタログとしても読めますが、NY生活者の生の声が反映されている点が単なる入門書と異なる点です。ナンコレ度★