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★沈没をシュミレーション「小松左京展D計画」

世田谷文学館「小松左京 D計画」【10月12日(土)~12月22日(日)】を見てきました。

 

2018年の筒井康隆展に続いてまたしてもSF関連の展示です。

「D計画」とは小松氏の代表作「日本沈没」に登場する用語で、日本の沈没の可能性を研究する機関です。

小松氏は「日本沈没」執筆の際、実際に日本を沈めるにはどれほどのエネルギーが必要か計算したそうです。

実家の商売柄理系には強く、実際氏の小説は細かなデータが書かれた難解なものも多いです。

一方その経験を買われて1970年の大阪万博にアドバイザーとして参加したり、阪神大震災の際には復興等を取材するなど、小説外の理系の仕事も多かったようです。

 

また非常に本格的なSF映画「さよならジュピター」は費用と手間が掛かり過ぎて儲けがほとんどないなど、何かと凝り性な面が強調されていました。

 

氏のデビュー作「地には平和を」は、太平洋戦争が終わっていなかったら?という想定で書かれています。

氏の発想の原点はあの戦争で「一億総特攻」などと勇ましいことを言っていながら生き延びてきた日本人が、実際に危機に直面した時どう行動するか?という点にあるようです。

 

そう考えると他の小説も危機に直面した日本人、という共通テーマを感じます。

「復活の日」は核戦争、「アメリカの壁」はアメリカの庇護下にある日本が音信を断つ、「首都消失」は東京が忽然と消えるというものです。

 

世田谷文学館のいつもと違う本気な展示となっていました。★

 

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