横浜市民ギャラリーのコレクション展2019昭和後期の現代美術―1964~1989―【2019.3.1 fri. – 3.17 sun.】を見てきました。
コンテナのようなものが全面にとりついていますが、これはエントランス部分を増築したものです。
横浜市民ギャラリーは1964年の開設以来、今日の作家展と称して一貫して現代アートを展示していきました。
展示の企画は針生一郎、東野芳明など新進気鋭の評論家が行い、もの派など最先端の芸術家を紹介してきました。
今回は展覧会を通して収集したコレクションを使って、この半世紀以上にも渡る歴史を振り返る展示です。
会場に置かれた過去の図録を見るとかなり前衛的な多いですが、その割には前半の展示は大人しいものが多いように感じました。
即興的なもので作品が残ってないのかもしれません。
展示が面白くなるのはもの派以降の後半の展示です。
村上氏のこの作品は気象予報をグラフィック化したものです。
気象予報に用いられる記号や図を脈絡なく並べたもので、絵というより多分にデザイン的です。
荒川修作氏に通じるようなクールな画面ですが、水色のラインが入っていたりしてセンスが光ります。
今日で言えばホームページのデザインみたいな楽しさがあります。
横須賀市に美術館を所有する若江漢字氏の作品。
北米大陸の下半分が四角に変換されており、境界線からキツネの毛が飛び出しています。
反米的なメッセージがありそうですが、位置的にキツネが中米っぽくてデザインとして面白いです。
若江氏は作品ごとに多様なメッセージがあってみていて飽きません。
菅氏は今日の作家展に6回も出品しており、同ギャラリーにとって極めて重要な作家であることが分かります。
表現は多様でも毎回難解な作品で、本作もよく分かりません。
石5つと木10個からなる作品で、組み合わせの自由度はあまりなさそうです。
まさにものを提示するだけというもの派の真骨頂みたいな作品です。
今回の展示の目玉は吉仲太造氏の作品がまとめて見れることです。
数は7点とそれほど多いわけではありませんが、作品ごとに表現が全く異なるので結構なボリュームに感じます。
本作はキャンバスに新聞紙を貼り付け、その上に錆びた釘を12本ずつ薄く伸ばした綿で覆うという作品です。
吉仲氏の作品は表現方法が変わっても、退屈な日常の牢獄というテーマが通底しているように感じます。
本作もベースになった新聞紙はテレビ欄と株価の蘭のみを選んで貼り付けています。
これらは中身は毎回違っても、俯瞰すれば毎日繰り返しに過ぎません。
釘と真綿は牢屋が並んでいるようにも見えます。
ただ個人的には一か所だけ向きを変えて釘を並べていたり、12本の釘という数が小学生の使う色鉛筆に見えたり、どことなくユーモア感が漂って見えます。
これは吉仲氏が闘病生活に入った後の作品です。
朝、昼、夜の3点組の一つですが、物の位置が変わっているぐらいで変化はあまりありません。
これも陰鬱な闘病生活の牢獄を表現しているように感じます。
ただ猫が幽体離脱(?)していたり、やはり独特なユーモアを感じます。
無料展にしてはかなりの充実ぶりです。
ただコレクションの質を考えればもっとやれるのでは?とも感じました。★