DIC川村記念美術館のカラーフィールド色の海を泳ぐ【2022年3月19日(土) - 9月4日(日)】に行ってきました。
展覧会のタイトルになっているカラーフィールドペインティングというのは美術の通史にも出てくる言葉ながら、定義はイマイチ曖昧です。評論家クレメント・グリーンバーグが使った言葉ですが、「方向性や形状がない」「地と図の境界がない」などといった特徴が語られます。
しかしこれらは抽象絵画やアクションペインティングにも言える特徴ですし、含まれる作家の範囲も曖昧です。DICのメインアーティストの一人であるマーク・ロスコや、かつて収蔵していたバーネット・ニューマンを含めることもあるようです。もっともロスコは他の作家のグループに入れられるのは嫌がったようですが・・・。
定義が曖昧なのはカラーフィールドペインティングについての研究が道半ばであるせいでもあるようです。特に国内ではカラーフィールドを題した展覧会は激レアで、今回対象となった9作家のうち、ジャック・ブッシュ、フリーデル・ズパース、ラリー・プーンズ、ジュールズ・オリツキーの4氏については国内美術館で収蔵がなく、実際僕も全く未見でした。
今回カラーフィールドと銘打たれた作家の共通はマーヴィッシュ夫妻のコレクションに入っていた作家という身も蓋もない言い方もできますが、カタログによると彼らはお互い顔見知りで、評論家のクレメント・グリーンバーグを通して知り合い、アトリエを共有したり同じ絵具を使うなど刺激を受け合って作品作りを行っていたようです。
フランク・ステラの作品はDICのものにマーヴィッシュコレクションのものが並べられ、いつもと違う雰囲気です。
正面には同じく変形キャンバスを用いたケネス・ノーランドの作品が並びます。
出色だったのは写真奥のモーリス・ルイスのイタリアン・ヴェールと呼ばれる作品群。
ルイスの作品はキャンバスを傾けて絵具を流すことで制作されていることは有名ですが、後期の作品ほどルイスのテクニックとともに絵具の質も向上し美しい作品が生まれたようです。
フリーデル・ズーバス「捕らわれたフェニックス」
ほとんどの人にとって未見だったとも思われるフリーデル・ズパース氏の作品。
メインビジュアルの一つに使われるだけあって、「色の海を泳ぐ」というサブタイトルにピッタリです。
一見即興的に書かれているように見えますが、実際には入念な下準備に基づいて書かれているようです。
カラーフィールドというと抽象画というイメージですが、彼の作品はタイトルから分かるように具象と抽象の間です。海流や風を思わせる作品です。
ジュールズ・オリツキー「高み」
ジュールズ・オリツキーの作品もメインビジュアルに使われるだけあってカラーフィールドというイメージと非常に合致する作品です。
キャンバスを床に置き、スプレーを空中に撒いてキャンバスに定着させるという方法で空気管を表現した作品で、収蔵がないのが不思議なくらい日本人がの込みそうな作品です。
もっともオリツキーは今回多数されており、スタイルはどんどん変わっていったようです。後期の手にグローブを付けて書いたという作品などはカラーフィールドのイメージからかなり外れますが・・・。
DICの展示は毎回色々発見がありますが、今回も見ごたえがありました。★★★