宇都宮美術館(栃木県)の視覚の共振・勝井三雄【2019年4月14日[日] ー 6月2日[日]】を見てきました。
1931年生まれの勝井三雄氏はグラフィックデザイナー業界では最長老。主な仕事は1985年のつくば万博の広告デザインなど。
この宇都宮美術館のロゴデザインなども手がけています。
非常に長いキャリアの方だけあってその展示数は圧巻です。
会場はまず①メインの展示室の手前の廊下で勝井さんの活動歴を年表と影響を受けた書物で振り返り、②ホールでは大型インスタレーション作品を展示、③一つ目の部屋では自主製作ポスターをメインに据えたグラフィックの仕事を、②2つ目の部屋では書籍を中心とした商業デザインの仕事が展示されています。
会場で無料で配られている出品リストは13ページにも及び、勝井氏と宇都宮美術館がこの展示にかける思いのたけが伺えます。
もちろんグラフィックデザイナーだけあって、展示物がただ大量なだけでなくそのセンスも抜群。特に「色光の部屋」と名付けられたポスターの部屋はそれを強く感じさせます。
とにかく膨大な展示物のためゆっくり見たいところですが、特に印象に残った作品をピックアップしてみます。
(予算的に)とどまるところを知らないアートブック。
超豪華本のスペースは会場の最も広い面積を占めており、勝井氏の中での重要性が伺えます(単に大きすぎて広くなっただけかも?)
バブル期の写真集はどんどん大型化、過激化、豪華になっていき、それそのものが作品化しているものも多くあります。
特に奈良高氏とはカレンダーなどでもコラボしており、宣伝用のポスターなども一手に引き受けていたようです。
三宅一生氏の代表作、プリーツプリーズとのコラボ作品です。
バックの芝生とのコラボがステキです。
企業に依頼されて製作したカレンダーはかなりの種類があり、そのイメージも様々。
企業のイメージに沿いながらも自由度は高く、勝井氏も楽しんで制作されたのかもしれません。
中でもこれは自由度が高い作品に思えました。
雑誌の表紙のデザインも沢山ありました。
哲学や音楽、美術など勝井氏が関心を持っていると思われる雑誌が多い一方、カラフルなイメージは料理など女性向けの雑誌とも相性が良かったようです。
とてもそうは見えませんが、ブロークンなデザインのカレンダーです。
自由に角度を変えて、色の重なり具合を変えることができます。
自主製作作品は色の配置だけのものが多いのですが、商業デザインは(当たり前ですが)具体的なイメージと色が合体しています。
これは能の海外公演のポスターですが、日本でもこれぐらいやって欲しいです。
青島幸男東京都知事の公約により、中止になったお台場の世界都市博の告知ポスター。赤い霧の向こうに描かれているのは六本木ヒルズ?
アクリル板を組み合わせて本のように立てておいただけの作品ですが、森をバックにした開放的な中央ホールの効果もあって、非常に美しい作品です。
昔持ってたかもしれない教科書。勝井氏の書籍の仕事の中では異色の存在ですが、並べても違和感がないです。
特に図画工作の教科書の可愛さはポスターにして部屋に貼りたいほど。
ギンザ・グラフィック・ギャラリーで展示された作品の一つです。
音楽は武満徹とスティーブ・ライヒです。
現代音楽に合わせて様々な色の組み合わせが流れ続けます。
今回の展示は動画作品も多く、また色んなアーティストとのコラボも沢山ありました。
万博は予算的気にも規模的にも勝井氏最大の仕事です。
大阪万博や沖縄海洋博にも参加してますが、最も深くかかわったのがつくば科学博。
地球スケールの会場マップなども手掛けていますが・・・
脳内世界を再現した「ブレインハウス」などパピリオンの企画にも関わりました。
質量ともに最高品質の展覧会でした。★★★