東京国立近代美術館の窓展:窓をめぐるアートと建築の旅【2019.11.1 – 2020.2.2】を見てきました。
かつて窓学展というのがありましたが、今回はそのアップグレード版といった感じです。
前回の展示も一筋縄でいきませんでしたが、今回もまた「これが窓の作品?」というものが多そうです。それは冒頭の展示が映画作品であることからも伺えます。
展示物の中には窓の年表(?)もあるのですが、作品に窓があれば窓作品だし、窓がなくても額縁やモニターを窓とみなす、ということで基準がいまいち見えてきません。
例えば建築でも窓が印象的に使われているものもあれば・・・
建物すべてが窓というべきものもあります。
ただ、国立近代のヘンな企画展はヘンな作品が集まっていて結構面白いものが多く、窓ということに拘らなければ楽しい展覧会でした。気になった作品をピックアップしていました。
かつて恵比寿の写真美術館でも展示された作品。
部屋に次々と様々な背格好の人が入ってき、何か動作をして出ていきます。
映像はエンドレスで繰り返しますが、徐々に登場人物が増えていき、最後は36人になります。
映像に矛盾がないように手作業で切り貼りして作ったそうです。
東南アジアを思わせるカラフルな色使いですが、満州生まれの日本人の作品です。
戦中の中国で見た風景を作品にしており、ショーウインドウ内には子供のおもちゃなどが置かれています。
ポップな色使いとショーウインドウという楽しげなものを使いながら、実は戦争を思わせる事物が潜んでいるというアクロバティックな作品です。
モニター=窓というわけですが、ナム・ジュン・パイクは衛星で作品を世界中に発表するなど、モニターを通して世界中とつながっていたアーティストでもあります。
この作品でも韓国やアメリカなど世界中の音楽家がランダムに登場します。
ブラウン管を使った作品にも関わらず、メッセージが古びない所以です。
その横に展示されていたパイクの妻、久保田成子の作品です。
マルセル・デュシャンの「フレンチ・ウインドウ」のオマージュ作品で、ここでは窓がモニターになっています。
なんと演劇からも出品されています。
展示作は踏切と真っ黒な小屋ですが、これは劇をもとに作成されたインスタレーション。実際の劇にはこのような窓は登場しません。
解説によると観客が劇を観るのは舞台空間の外から覗き見るようなものだから、窓なんだそう。
所謂インスタレーションの一種ですが、それにとどまらない試みです。
作品はセットとビデオからなり、西京という仮想の国を設定し、その入国を管理するという作品です。
安っぽいセットで大真面目に入国について説明するのが笑えます。
入国のゲートも窓ということでしょうか?
ポーランドの映像作家の作品です。
高層住宅に住んでいる作家が下を見下ろして広場を歩く人々を解説する。
淡々としたテンポで特に面白いことをいうわけでもないのに、なぜかじっくり見てしまった作品です。
そっけない都市の風景、そっけない日常が現代社会を表わしているのでしょうか?
ついにPCのディスクトップも窓になりました。
ニコニコ動画でWindowsのエラー音で音楽を作る人がいましたが、まさかこんなところで見ることになるとは・・・
関西の芸術家グループPLAYの中心メンバー、池水慶一さんの作品です。
PLAYはアクションやイベントのみで、作品を残さないのですが、本作も写真や資料しか残っていません。
当時埋め立て工事中の六甲アイランドの先端に作った作品で、アルミサッシを鋼材の枠に取り付けて建てたもの。
思い付きみたいな作品ですが、施工(?)写真からは結構大掛かりな作業が必要だったことが伺えます。
案内状(?)。作った人20人、見に来た人25人とのこと。
まさにこの光景を見たいがためだけに作ったということでしょうか?
窓学の考えは理解できませんが、珍しい作品が見れて満足です。★★