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★もはや懐かしいポップアート「ジュリアン・オピー」

東京オペラシティギャラリー(初台)のジュリアン・オピー展【2019年7月10日[水]─ 9月23日[月]】を見てきました。

 

ポップアートとミニマルアートを合わせたような作風のジュリアン・オピーは日本では水戸芸術館での2008年以来、11年ぶりの個展です。

展示の構成はまず巨大な展示空間を生かした、大型作品を展示しています。

こんなシンプルな作品がここまで巨大化しているのはやはり異様な光景です。

この2点の作品が今回最大のものになり、590×671cmあるそうです。

 

ジュリアン・オピー「Walking in Boston3」

向かって左側に並ぶ作品は黒字にカラフルなパネルのようなものを貼り付けて制作しているようです。

一度制作(というより設営か)風景を見てみたいものです。

ジュリアン・オピー「Sam Amelia Jeremy Teresa」

ライトボックスの作品も巨大化しています。ここまで巨大な均一な画面を作るのは難しいかも?

ジュリアン・オピー「Jada Teresa Yasmin Julian2」

動画作品も巨大化してます。色々なモチーフの作品を作ってるのも拘わらず、巨大作品のモチーフは全てヒトです。やはりヒトが最も重要なモチーフということでしょうか?

2つ目の部屋ではより多彩な、ユーモラスな作品がありました。

ジュリアン・オピー「Walking in London」

直方体の作品で、4つの側面を人々が歩いています。

この作品を含め、いくつかの作品はタイトルに都市名が付いていますが、実際にはそれを思わせる描写はなく、かえって世界の均一化を強調しています。

また画面上の人々は非常に高速で動いており、観客が付いていくことはできません。これはお互いに無関心な都市の人々の行動を表わしているのかもしれません。

ジュリアン・オピー「Towears1」

複数の高層ビル群からなる作品です。

これも均一化する都市の象徴であり、どこの町でも見られる風景です。

それぞれの高層ビルはディテールを簡略化しながらありがちなビルの特徴を捉えています。

窓のマス目に黒の濃淡だけで映り込む隣のビルを表現しているのも面白いです。

ジュリアン・オピー「3 stone sheep」

都市を扱っていたのに唐突に草を食む羊が出てくるのは面白いのですが、この羊はブロンズとアルミニウム製で、他の作品と同様冷え冷えとした工業製品です。

人よりもさらに簡略化した白と黒の表現が見事です。

ジュリアン・オピー「Crows」

尤もユーモアを感じた作品です。都市といえば鳩ですが、ここまで単純化したアニメーションでも一目で鳩と分かるのは作者が流石なのか鳩が流石なのか・・・

鳩のサイズにピッタリ合ったモニターも可愛い。

 

 

ジュリアン・オピー「Carp」

最後は20台のLEDランプを使ったスクリーンで展開する、横24mにも及ぶアニメーションです。

LEDランプがびっしり並んでおり、その点滅だけで鯉の遊泳を表現しています。

向かいの窓を見ると空中を鯉が泳いでいるように見えてちょっと面白いです。

 

巨大で多彩な作品が多く結構楽しめましたが、11年前と比べて何が進歩しているのか?と疑問も感じました。ポップアートももはやチープ化してしまったのかもしれません。★

 

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