ウルトラマン、ウルトラセブンに続いて帰ってきたウルトラマン(以下帰マン)も全話見てみました。
帰マンからウルトラマンレオまでの第二期シリーズは第一期に比べると低く見られがちです。
しかし帰マンは過去作にはない魅力があります。それは話のバリエーションの広さです。
帰マンは始め人間ドラマ重視の作品として始まりました。初代マンのハヤタ、セブンのモロボシダンのような完璧超人でエリート然とした人物とは違い、主人公の郷秀樹は人間味あふれる人物として描かれています。なので郷は実に失敗が多いです。
しかし路線変更に伴って、物語は初代ウルトラマンの怪獣主体のSF要素やセンス・オブ・ワンダーを取り入れたり、セブンも顔負けのハード路線に突っ走ったり実に振れ幅の大きい展開に発展していきました。
一方でシリーズ後半ではウルトラマンシリーズの長期低迷を予感させるような要素も多く散見されました。怪獣のデザイン過多、すなわち着ぐるみの劣化、子供騙しの演出、無理滑稽なストーリーなどです。正直4期は診るに堪えない話も散見されました。この辺りが初代やセブンより下に見られる要因だと思われます。逆にいえば1~3期はむしろ前作に勝る要素も多いと思います。
特に面白かった話を振り返ってみます。
パラゴンは二人の人が入って演じるには最適の形状ですが、デザインはやや過剰に感じます。富士山の上に立つことをコンセプトにしたとすれば面白い試みですが・・・
蜃気楼怪獣ということで超巨大怪獣に見せかけていたのは面白かったです。
いわゆる「11月の傑作群」の一作。11月の4作を特別視する理由はありませんが、中期のウルトラマンが優れているのは事実です。
ゼラン星人が化けているテルオ君はかなり美少年で、余計に不気味さが漂っています。
演技力も高く、ラストの伊吹隊長と霊安室で戦うシーンも引き立ちます。
霊安室(の内部が本当に↑のようになっているのかは疑わしいですが)に潜むテルオ君=ゼラン星人とのシーンは子供番組ながらの本気さが伝わってきました。
この魚眼レンズのシーンがインパクト大です。
病院での郷と伊吹隊長の会話シーンもいい演出です。
帰マン自体が人間ドラマ中心なので、この伊吹隊長も厳しいながらも父親的なキャラクターが後半になるほどいい味出していました。
また体調以外のMATの面々も初期の対立を乗り越え、実にいい仲間になっていました。
それだけにこの郷が精神鑑定にかけられるシーンはグッとくるものがあります。
ノーテンキは初代ウルトラマンや、毎回北斗が疑われるエースでは出せない味です。
恐竜の骨のような怪獣はシーボーズで既に試みていますが、化石怪獣ステゴンはそれを4足歩行にしたようなデザインです。
恐竜の発掘現場の骨と思ったものが怪獣だったというもので、デザインは埋まっている恐竜の骨が動き出したようなまんまのデザインです。作中でも恐竜なのか怪獣なのか、用語が混乱しています。
膝をつかない4足歩行怪獣だが、高下駄のせいで動きはやや不自然です。首も操演のせいかやたらブラブラしていますが、歯をカチカチいわせる演出もあってより骨っぽくなっています。
発掘を通して子供に好かれたり、怪獣なのに草食(と思われる)だったり色々新機軸な要素が多い。当時の子供には不人気だったかもしれませんが、あまり強そうに見えない怪獣のハートフルなエピソードは帰マンの幅の広さを示しています。
末期の帰マンはデザイン過剰な怪獣が多いですが、その中ではシンプルなのが原始地底人キングボックルです。
三日月形の触角(?)がオシャレポイント。
この触角を高速回転させることで電話ボックスだろうが団地だろうが何でも地中に沈めてしまえる(らしい)。ウルトラマンも沈められます。
しかし触角をもぎ取られて形勢逆転。あっさりやられてしまいました。
一応話はサスペンス仕立てでしたが、この格好のキングボックルが強引に車に乗り込んでひき逃げしようとしたり、ちょっと笑える絵が多かったです。
末期の帰マンでは出色の作品。
末期は気の抜けた造形の怪獣が多いのですが、ヤメタランスはそれを逆手に取ったデザイン。
やる気をなくさせる怪獣という思い付きで一本撮った印象で、怪獣もそれにふさわしい造形です。
下半身はあまりにも投げやりですが、このキャラクターならそれもゆるせるような・・・
たーまプラザあたりで撮られたという高低差のある団地群が建築的に見ごたえがあります。
ヤメタランスのせいで、あらゆることを投げ出してしまうのですが、その一環で聖火ランナーが仕事を投げ出すシーン。
宅地造成中の様子がよく分かります。
ヤメタランスの影響でブランコで遊ぶMATの面々。
ウルトラマンもやる気を失いかけます。
ヤメタランスが宇宙に帰った後登場する黒幕の宇宙人ササヒラー。
スルメみたいなペラペラの造形はちょっとガッカリ。
でも「それでいい それでいいのさ ウルトラマン」は名言川柳。
ラストの仕事をさぼる郷。末期の中では脚本も絵も丁寧な作りに感じました。
この話と、次の「ウルトラの星光る時」が帰マンのクライマックスであり、それ以降は物語的には蛇足。それぐらい完全燃焼した話でした。
重要エピソードに登場するブラックキングは黄金のグイと前に曲がった角がこれまでにない造形で、それを強調した登場シーンがかっこいいです。
ナックル星人はブラックキングと補色的な白い身体に赤い斑点、顔面は赤い宝石のようなものが埋め込まれただけという抽象的なデザインで、なかなかの出来。
夕日での決闘シーンは例によって絵的にはキマっていて、ナックル星人のヤクザキックなどのキャラクターもあって盛り上がります。ただし、ブラックキングの中の人の力量不足か、やや違和感を感じる部分も。
帰マンの科学系の怪獣の一体ですが、デザインは帰マン中ではかなり異端です。
前半散々探していたのに、突然東京近郊にフワフワ浮いているというシュールな登場の仕方がいいです。
左右非対称の極端に吊り上がった巨大な目、真っ赤な吸い込み口のような口。胴体全体に顔が付いています。
派手な模様のついた傘を高速回転させ、台風を起こします。
攻撃方法もいきなり浮かび上がって足でウルトラマンに組み付くなどトリッキーです。玄人にはあまり受けが良くないですが、挑戦的な怪獣です。
玄人筋では帰マン最強のプリズ魔。登場シーンでは灯台を食べて(?)しまいます。
光を怪獣化したという挑戦的な試み。実際には怪獣というより鉱物のようですが。
ウルトラマンを襲う謎の攻撃の数々。引き寄せて熱攻撃はまだ分かるのですが・・・
その直後に繰り出した光線(?)は人知を超えたものです。
ナイター球場で戦うというシュールな絵面。
最後は体内からスぺシウム光線で爆発。
可動部がないオブジェみたいな怪獣なのは不満ですが、美しい絵は多かったです。
尤も表現が先鋭化した話でしょう。
夜の氷の湖から現れる魔人怪獣コダイゴンはなかなかかっこいいです。湖の氷が割れるのが神様の通った跡という伝説を取り込んでおり、神秘的な雰囲気がよく出ています。ウオオオオーーーーンという鳴き声も特徴的。固い身体、ウルトラマンを圧倒する怪力と宝剣、火炎放射でかなりの強敵です。
一方の相方のグロテス星人。デザインもキャラクターも末期の帰マンの烈火の象徴的存在です。
「いくら泣いても無駄だ。星人は涙とは無縁なのでな」などチンピラ的名台詞が多いです。
ウルトラマンとの戦いでも巨大化しますが、ほとんどコダイゴンの後ろに隠れて応援しているだけでした。
帰マンどころかウルトラマン全話を通してベストともいえるハードな展開は圧倒的です。
絵としても不安感を感じさせる構図が多く、異色の出来です。
本話の唯一の救いと言えるパン屋のシーンは祖師ヶ谷大蔵で撮られています。
現在ウルトラマン商店街になっています。
舞台となる川辺の廃屋。廃屋に住む少年と宇宙人というのが既に非常に攻めた設定です。
宇宙人と差別され、泥水を浴びせられる少年の衝撃のシーン。
廃屋でついに登場したメルツ星人。事故による傷とのことだが、焼けただれた顔面は思わず目を背けたくなります。
本話はMATは郷と伊吹隊長しか登場しません。
アート映画のような構図です。
そしてなぜか虚無僧に扮する伊吹隊長。本話の時間軸が異世界だと言われる所以です。
ラストはウルトラマンと巨大魚怪獣ムルチの戦いですが、本話に怪獣が出る必然性がなく、蛇足な感じはします。
しかし造形に手抜きはなく、口の中に細かい歯がびっしり並んでいるのが印象的。
鳴き声は赤ん坊の泣き声の変換で、こちらもインパクトがあります。
戦闘シーンは長回しの一発撮り。早く撮影が終わったので好評だったそうです(笑)
ただ、雨のシーンで泥にまみれて怪獣とウルトラマンが闘うというのは結構レアなので見ごたえあります。
怪獣が宇宙ステーションに入り込んで地球にやって来るというキテレツな展開です。
やどかり怪獣ヤドカリンはその名の通り、宇宙ステーションにこもったまま手だけだして移動します。
その奇妙な絵面がなかなかいい。
なかなか顔を出さないのですが、ようやく出てきた顔はなんだこりゃって感じでした。
まあヤドカリも貝殻あってのヤドカリですからね。
再び殻にこもったときは引っ張り出そうとするウルトラマンが可愛い。
透明怪獣は3体目だが、ビルの影として登場するなど、都市ならではの演出が光った。ベムスターに続く宇宙怪獣としても長い鼻と体毛、意地悪そうな顔と単純ながらいい造形だった。等身大のウルトラマン
透明怪獣というのはネロンガ、ゴルバゴスなどがいて真新しさは全然ないのですが、今回は新宿駅などに影だけで透明を表現するところがちょっと面白かったです。
造形は長い鼻と体毛だけでキャラ付けしていて、ずる賢そうな顔がいい味出しています。
攻撃も長い鼻で締め付けるだけというシンプルさ。物語も帰マンらしいシンプルな人間ドラマで好感持てました。
ところでこの回では郷が怪獣に走っていき、等身大のまま走りながらウルトラマンに変身するという演出になっています。
前作にはない郷とウルトラマンの一体を演出するシーンになっていました。
角と顔面しかないかのようなオクスターの思い切った造形が見事。文明批判のようなストーリー展開も華を添える
水牛怪獣オクスターの思い切ったデザインが秀逸です。
人が入ることを前提にどこまで人の形を崩すかがポイントですが、今回は顔面の横に巨大な角を付けて、ほとんどこの角だけでアクションを演出。
ボディは顔面以外の下半身はシーンのほとんどが水面下であることを生かしてどうなってるのかほとんど分かりません。背中はたてがみ?のようなものが傾斜をつけてずっとついているだけといういい加減さで、実際に動画を見ると結構アラも目立つのですが、そこはインパクト重視です。
前半の牛の骨を持っていく学者が襲われるシーンも気合が入っていておどろおどろしい感じがよく出てきます。
高度経済成長期のゴミ問題を風刺した作品です。
冒頭とラストにピエロが唐突に登場するなど、ファンタジー的な脚本の仕事が光っています。
夢の島を意識したと思われるごみ処理場で、ゴミの山から頭を出すプラスチック怪獣ゴキネズラ。ここも演出が光ります。
ゴキネズラは決して出来のいい造形とは思えませんが、アクターのピエロの延長戦のようなおどけた演技が面白いです。
軽業師のようにミサイルを加えて受け止めるなど、変わった芸も見せます。
ゴミが舞う中で戦うシーンも非常に美しいです。
スポ根ものが多いと思ったら本当にキックボクシングの回があった。帰ってきたウルトラマンらしいひねりのない王道展開だが映像の良さやセリフが少ない点など飽きさせないいい話。ドラマのせいでグロンケンは脇役に追いやられたが、なぜか観音様を切る通り魔的キャラクターと、凶器攻撃だけでなくジャンプキックが得意という意外性も面白いです。顔も獰猛ながらどこか愛嬌のあるイヌ科の動物を彷彿させます。
グロンケンは生物+機械という組み合わせであまり評判が良くないですが、両手が丸ノコ、頭、お腹、尻尾もトゲトゲと全身どこを殴っても痛そうな怪獣。分かりやすくていいと思うのですが・・・
意地悪そうな顔と、なぜか観音様を通り魔的に切り裂くというナゾの行動でキャラ立ちは抜群です。
物語はキックボクサーとの友情と恋が絡んでおり、ウルトラマンも今回はボクシングスタイルで戦います。
グロンケンが観音様に逆襲されたり、ジャンプキックで戦ったりエンタメ要素も高い話でした。
朝霧高原でロケを行ったという本話は他にない異色の雰囲気で、帰マンの多様性を表わす作品です。
怪獣とは直接関係ないシーンでは構図がキマっているシーンが多く、見どころが多いです。
田園風景を歩くキングマイマイ(幼体)。
初期の帰マンのようなシンプルな造形です。
オナラで攻撃するという前代未聞の戦法!
作中でも田舎=下品で不潔というイメージで語られていますが、それを逆手に取った(?)演出でした。
ヒッピースタイルの上野隊員が活躍する話でもあります。
そしてキングマイマイ(成体)。夕日に輝く金色のボディがかっこいい。
ウネウネ動く触角と尻尾で生物らしさを表現。
夕日のウルトラマンは今回もかっこいいです。
中性子に続いて次は磁力と科学的な怪獣が続きます。マグネドンは単純なデザインながらマグマが固まったような黒光りする硬そうなボディに、真っ赤な角が湾曲して付いており、恐竜のよう。でも顔はカワイイ。電気を流されて苦しむのがかわいそうです。山岳地帯の撮影が多いので、怪獣が明確な悪事を働かないのも帰マンの特徴。地球の磁力そのものの怪獣というすごいスケールです。
ウルトラマンの対決はアッサリ気味ですが、帰マン屈指の名獣だと思います。
霧吹山に怪獣が出るというので調査に行き、郷だけが怪獣を感知します。他の隊員が懐疑的な中、加藤隊長だけは郷の話に耳を傾け、現地に赴いてくれます。第一話から続く加藤隊長の人柄と郷の人間味が強調される話になっています。
一方映像としては霧深い山での怪獣という場面のため、全編薄暗い中での特撮シーンがかっこいいです。また一話に複数の怪獣が出ることは過去にも多々ありましたが、複数の怪獣と戦うウルトラマンというのは本話がはじめて。緊迫感溢れる戦闘シーンはカッコイイのですが、割とあっさり怪獣がやられてしまうので、サドラ、デットンは最弱コンビ、サドラは後に当て馬怪獣として活躍(?)することになります。
そんなサドラですが、鋭角の逆三角形の頭部や充血したような赤い目、めくれ上がった唇など造形のレベルは非常に高く、初期の帰マンらしいシンプルなデザインながらキャラ立ちしています。
腕だけでなく足と尻尾もハサミになっている徹底したデザインなのですが、それを生かすシーンがないのは少々残念です。
一方相方(?)のデッドンは劣化したテレスドンをリメイクした怪獣とのこと。
ボコボコになった頭部はテレスドンの鋭角的な魅力が失われ、モッサリした感じになっていますが、これはこれで味が出ています。
中に入っている演者のせいか上向きっぱなしの頭部やボンヤリした感じが逆にキャラ立ちしています。
逃げようとして後頭部にスペシウム光線を受けて絶命という情けない最期も徹底しています。
同じく1対2の構図ですが、こちらはウルトラマンが一度敗北しています。
都市の夕景というシチュエーションですが、高速道路を取り込んだ構図は計算ずくで非常に決まっています。
電波怪獣ビーコンの造形が面白いです。
顔は信号機を模したと思われますが、青信号が無くなっています。下には左右に動く小さな牙が付いていて、なんだか可愛い。
背中には色とりどりの光るトゲが生えています。
いつもはフワフワ宙に浮いていて、脚を地につけるときは手をブラブラしてる奇妙な演技も面白いです。
ビーコンは自分が見た映像をテレビに移すという能力を持っていますが、これが特に戦闘に役立つことはなく、ただMATの失態が全世界にテレビ中継されるだけ。このようなヘンな展開は自作のウルトラマンエースにはない大らかさです。
MATは東京中の電波を停止し、ビーコンを海上におびき出そうとしますが、ビーコンはアマチュア無線に惹かれて江戸川区に出現。具体的な地名が出るのも珍しいですが、狙われた町のような下町の戦闘の演出が光ります。
ビーコンは愉快な怪獣ですが、意外にも強豪で、スペシウム光線と同等の怪光線を放つほか、電気ショックでウルトラマンを気絶させます。
が、最後はブレスレッドの力で立ち直ったウルトラマンのウルトラマンスパークを受け絶命。
この時ビーコン目線で視界がぼやける演出が憎い。音楽もいつもの勇壮な音楽ではなく、余韻を残す感じです。
戦闘が始まったときは昼間だったのに、ラストは夕方になってる。
ラストもいったん消え、無言で夕日に向かって飛んでいくウルトラマンという演出です。
帰マンは夕日のシーンに印象深いものが多いですが、その中では本作がベストです。
異郷のノスタルジー★★★建築図鑑299多摩ニュータウン永山団地・諏訪団地 – 博司のナンコレ美術体験2023年1月1日 8:50 PM /
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