今回は渋谷の青山製図専門学校1号館に注目してみたいと思います。
渋谷に近くの建物で、圧倒的なインパクトがありますが、学校だけに中には入れず、どのようになっているか気になっている人もいるのではないでしょうか?
坂が多い渋谷だけに、この建物も2階から橋を渡ってのアプローチになっています。上部構造物ばかりに目が行きますが、足元もエントランスも歪んでおり、サインもそれに習っています。淡い青色に方眼のエントランスは建築を志す人の基本である製図用紙を思わせます。
設計は渡辺誠氏。
他に代表作として、地下鉄大江戸線飯田橋駅や、
九州新幹線の新水俣駅などがありますが、キャリアの長さに対して、実作が少なすぎる気がします。どうも建築の実作というより、コンピュータプログラムの方が主な仕事になっているようです。
頂部に載った回転楕円体は高架水槽、赤いのは避雷針です。
内観も攻めてます。天井にスリットを通し、中に電灯を仕込んでいます。
家具も渡辺氏デザインです。中でも壁が傾いているのが分かります。
ポップなデザインのソファ。
路面からは見えませんが、非常階段の手すりは明らかに後の地下鉄飯田橋駅と共通してます。
立面図を見ると、中は普通の地上5階立てになっているのが分かります。
エントランス階の平面図。路面に面している側はエントランスと階段の機能しかなく、以外にも上部に乗っかった赤い構造物が教室として活用されていることが分かります。
この建物はガンダム建築の代表格としてよく語られます。この言葉の定義は色々あるでしょうが、大体メカっぽい建物と考えていれば間違いはないです。
同じジャンルの建物としては京都駅などがあります。
設計の渡辺氏の解説がかなりの悪文で(このような建物を建てる建築家の文章は大抵悪文です)設計の意図が読みづらいのですが、読み取れることは
➀この建物を植物の成長に例えていること
②建物の完成を離陸に例えていること
です。2つ合わせると、これは建築家のタマゴたちに対するエールと受け取れます。建物の立地場所も小高い丘の上です。植物が種子が飛ばす時も、昆虫が成虫になり始めて飛ぶ時も、少しでも高い位置に行こうとします。すると1階から4階までの四角い部分が卵兼高台であり、5階の赤い構造物は昆虫が今まさに飛び立つところを表現しているのではないでしょうか?
一方このような建築設計のセオリーや構造的合理性に逆らった建物を脱構築主義建築とよびます。
似たような作家として、ベルリン・ユダヤ博物館で有名なダニエル・リベスキンドなどが考えられますが、あちらは公共施設としての使い勝手を大幅に犠牲にしてまでアクロバティックな設計をしているのに対して、製図学校は建物の機能は犯していません。
また、竣工から30年近く経っても学校の経営も順調で、建物もきれいに保たれていることを考えると、以外にも建物の構造や機能は問題がないのだと考えられます。
にも拘わらず渡辺さんの実作が少ないのは、ザハ・ハディドの国立競技場で見られるように、日本では高いお金を払ってまでも脱構築主義建築を建てるインセンティブがないと考えれれているのでしょう。
アクロバティックな設計にも拘わらず、機能性とメッセージ性を兼ね備えた稀有な建築です。ナンコレ度★★
★★建築図鑑29 広告ビルの神髄「サンバーストビル(日の丸自動車学校)」 – 博司のナンコレ美術体験2018年4月5日 10:42 PM /
[…] ふざけた一発芸のようですが、フィリップ・スタルクのアサヒスーパードライホールや、渡辺誠の青山製図学校と同様、その見え方には非常に気を使っているようです。これが今日でも大事に建物が使われている要因だと思います。★★ […]