吉阪隆正設計の大学セミナーハウス(八王子市)を見てきました。
吉阪隆正(1917-1980)はその哲学者然とした風貌もあって、現在でも住宅作品などが人気の高い建築家です。大学の講義でも高確率で取り上げられます。
一方大学セミナーハウスは仮面ライダーのロケ地としても有名です。
当時は八王子といえば超ド田舎だったと思われますが、現在でも結構山奥で、交通の便も悪いです。
バス停から歩いてくる場合、真っ先に目に留まるのが壁を這う大量のパイプ群。
さらに屋上には目玉のような開口部もあり、ますますアヤシゲな雰囲気です。
建築家からすると隠したい部分で、作品集には絶対登場しないアングルですが、むしろこの建物の雰囲気に非常にマッチしてると思います。
正面方向からのアングル。後ろの2面はパイプだらけです。
嘴のようなエントランスの日よけ。
本建築を一つのオブジェとみなしていたという吉阪からすると、「余分なもの」として映ったのが4階へ直接アクセスできるブリッジです。しかし建築をいろんな角度から見るには非常に有効です。
4階部分のナゾの切り込みや何故か途中で切れてる軒などがよく見えます。
コンクリの打ち継ぎの高さが場所によって違うのは建物の階数が外からは分からなくするためです。そういわれて見ると開口部(窓)もランダムに空いています。
中は1階が事務室・・・
3階がラウンジ・・・
4階が多目的ホールになっています。
部屋の配置がスキップフロア式で複雑なうえに、階段の手すりや階段裏の処理など内装も異様なまでの凝り具合です。
さらに開口部も色々な形や配置をしています。
斜めの壁を生かした作り付けの椅子。
照明器具もオリジナルのものが残っています。
こんな空間なのに碁盤、オセロなど旅館でお馴染みの遊具が置いているのが面白いです。
天井採光のデザインです。外観が有名ですが、内観もかなり面白いです。
窓からは竣工当時はなかった多摩ニュータウンが見えます。
さて、大学セミナーハウスとはこの建物のことをいうのではなく、丘一体に建つ研修施設全体を指します。「本館」と呼ばれるこの建物の4階には粘土の巨大模型が展示されています。
もう取り壊された建物や、吉阪氏設計でない建物も多数あります。
本館以外で最も面白いのが松下幸之助の助成で建てられた「松下館」。手すりが懐かしい昭和テイストです。
何の意味があるのか不明ですが、屋根が波打っています。アヤシゲな雰囲気は特撮番組にピッタリです。
こちらも相当アヤシゲな「ユニットハウス」。
外観は廃墟化していますが、現在もセミナー室として使われているみたいです。
丸い屋根が2つくっついているのが、「講義室/図書館」
反響のための板が天井に付いています。この辺りも懐かしいデザインです。
ほとんど屋根だけの建物は中央セミナー室。
野外劇場みたいなスペースもあります。
ちょっと離れたところにあるのが国際館。屋根の上の絵画はもうほとんど見えません。
その近くに仮面ライダーでも使われた橋がありますが、完全に廃墟化してます。
現地に行ってみると鬱蒼とした山奥に建物を点在させるというスタイルで、特に初期の建物は土地の高低差を生かしたものが多く、楽しめます。吉阪氏は登山家としての顔もあり、山での教育の哲学のようなものを感じます。そう考えると逆台形の本館も周りと一体感があるように感じます。★★★
★★★教育思想と建築の融合「子どものための建築と空間展」 – 博司のナンコレ美術体験2019年1月13日 12:56 AM /
[…] しかし高低差を利用した設計は師匠の吉阪隆正氏を思わせます。 […]