• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★「侵入するスペクトル ユアサ エボシ」

Aoyama – Akio Nagasawa(青山)の侵入するスペクトルユアサ エボシを見てきました。

「架空の三流作家」であるユアサエボシの展覧会、というスタイルの展覧会です。上記がその自画像になります。

かなり詳細に設定が練られています。

経歴によると1924年生で1987年死去となっています。

福沢一郎山下菊二、篠田桃江など所謂一流作家の周辺には居たが鳴かず飛ばずで最後は焼死、というとなかなか悲惨な人生にも聞こえますが、芸術家として食べていける人は1%もいないでしょうし、むしろあり触れた話なのかもしれません。

ユアサエボシ「意思・爆発」

作風は基本シュルレアリスムですが、名作になる要素を丁寧に除去したもの、といったところです。

上記は1944年にユアサがヘルニアが原因で兵役を不合格になったというエピソードを元にしています。腰のあたりの爆発はヘルニアのダメージを表します。

画風はルソー風で遠近感、立体感がなく、人体表現も適当。その一方で左右非対称でSFチックな衣装はシュルレアリスムを取り入れているようですがミスマッチです。

 

ユアサエボシ「誘惑」

これは当時の誘拐事件が多発した世相を反映したものです。

誘拐しようとしている男の表情や衣装がチグハグで気持ち悪さを強調しています。

一方誘拐される女児は割と上手く描けており、やはりアンマッチです。

 

ユアサエボシ「娼家」

タイトルから娼館の描写と察せますが、それがなければ全く意味不明な作品です。

ベッドに横たわるドラゴンのインパクトが強すぎて、壁に貼られたコラージュも霞んでいます。

経歴にもあったマックス・エルンストの影響を感じますが、不気味さのベクトルが明後日の方向に行っているのが笑えます。

ユアサエボシ「侵入するスペクトル」

これに至ってはまったく意味不明です。

右の人物はフランシスコ・ザビエルの肖像画を模写したものですが、左のスペクトルは何を意味しているのか?

解説自体が迷走しているのも面白いです。

 

ユアサエボシ「理想社会」

古賀春江の作品のような、手塚治虫風メカが画面いっぱいに書かれた作品。

豚はジョージ・オーウェルの「動物農場」のパロディ?

エボシも成長しているのか、この作品はそれほど凡作にも感じません。

ただ画面に要素が多過ぎて表現過多なのは相変わらずです。

 

このような展覧会を通して、凡作や三流とは何なのか考えさせられました。

作品一枚一枚に解説が付いており(というより解説も作品なのでしょうが)やはり名作になる要素がどこにもないことが強調されているように感じます。

ふざけているようで意外とためになる展覧会でした。バットアート展覧会というものあったし、この傾向は続くかもしれません。★★

 

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