東京都墨田区のすみだ生涯学習センターを見てきました。
設計は長谷川逸子氏。
1987年竣工の湘南台文化センターで一躍有名になった人です。
またザハ・ハディド、妹島和世に先駆けて、女性でスター建築家と呼ばれるようになった初めての人でもあります。
本建築も湘南同様、面白い外見をしているのですが、湘南と違ってどちらから見ても
建物を引きで見ることができず、現地に来ても形状を実感できないのは残念です。
敷地は東武スカイツリーラインに沿った三角形状で、小さな家が密集する典型的な下町。
また地盤の関係で地下に施設を埋めることもできなかったようです。
土地の面積に対して過大な機能を要求されたというのが長谷川さんの言ですが、フツーのビルにすれば要求は満たされたのでは・・・とも思います。
基本的な構成は敷地に3つの建物を建て、それらをブリッジでつないでさらに全体を膜で覆うというものです。
外観を特徴づける全面的に覆うパンチングメタルの幕は、テントをイメージしたとのこと。
テントに見えるかはともかく、角が少し空いていたり、弯曲したりしてるのは確かに柔らかなイメージを持たせるのに成功しています。
この幕を中から見ると、外部と緩やかに仕切る効果があることが分かります。頻繁に通る電車も風景の一部と化しています。
また夜は光が漏れることによって独特の印象を受けます。
長谷川さんというとどこでもパンチングメタルを使っている印象ですが、この立地条件とは非常にあっている気がします。
この外皮はブリッジがかかっており、湘南台同様遊歩道としての機能も持ちます。
子どもが喜びそうな仕掛けですが、残念ながら施錠されてはいれませんでした。
このあたり東京はやはり制限がきついです。
足元は湘南台同様メカニカルな河がありますが、流石にこの面積で河を作るのは難しかったのか、演出はイマイチ。
随所にみられるナゾのインテリア。
これがあってこその長谷川建築です。
ただデザインの密度は湘南台に比べ大幅に劣りますが・・・
見上げると縦横無尽にブリッジが架かっています。
このあたりの視覚的面白さは湘南台にはないものでした。
また外部に対して内部ではガラス張りの解放的な作りになっています。
これは生涯学習とあるように世代の違う人が建物を利用してもお互いが何をしてるのか見ることができ、ブリッジの効果も合わせて幅広く交流することを意図したためだと思われます。
一階から見ると魅力的な造形が広がっているのですが・・・
中はあまり変わったインテリアもなく、フツ―な印象。
また小さい部屋が多く、かなり狭く感じてしまうのが難点です。
長谷川さんは「プログラムの変化によってフレキシブルに使える」と言っていますが、使い勝手はどうなのでしょうか?
実際は数は少ないながら、老若男女色んな人が使っていたので、複雑な作りがノマド的な空間になって意外と使い勝手がいいのかもしれません。
テーマは下町の限界に挑戦といったところでしょうか。
どうしても湘南台と比べると見劣りしますが、厳しい条件の中で理想を実現しようとした長谷川さんの奮闘が見れる力作です。★★