森美術館(六本木)のMAMスクリーン011:高田冬彦【2019.6.20(木)~ 10.27(日)】を見てきました。
塩田千春展と同時開催されている展示で、展覧会場最後のシアタールームで見れます。
ここでは1時間周期で映像作品が見れるというスペースで、座席も多くかなり贅沢な空間です。
今回の出品作はジェンダーや日本の古典に着想を得たものが多いのですが、バカバカしい作品が多く、それぞれの専門家を敵に回しそうです。特に面白かったものをピックアップしてみました。
高田さんの作品の多くは本人が登場し、そのほとんどがコスプレを伴います。
また多くの作品が何かしら性を感じさせるものが多く、本作もその一つです。
女神?に扮する高田さんがお告げ?の声に従ってフリーダ・カーロ、マドンナなど著名な女性のマスクを積み上げ、あごの下で支えます。
マスクの塔が高くなるにつれて不安定になり、ついには塔は崩れます。それをまた積み上げて・・・とエンドレスに続きます。
女性のマスクの積み上げとその崩壊は、女性の地位向上とその挫折の歴史の繰り返しを彷彿させます。
一方で高田さんは塔をあごで支えながら周囲に散らばったマスクを集めなくてはならないので、必然的に足にひっかけて取り寄せる形になります。ぞんざいに扱われる女性の生首はジェンダー運動をあざ笑っているようにも感じます。
これも女装とコスプレという意味で上記と共通する作品です。
また自宅の一室で撮っているのも同様です。
高田さんは女学生に扮しており、さらにスカートをめくる手を高田さん自身がワイヤーで操作しています。
クラシックの音楽に合わせ、スカートをめくられながら踊り狂う女学生は今回出品されたどの作品より強く狂気を感じます。
スサノオノミコトに扮した高田さん自身が男根に取り付けた(ように見える)日本列島を振り回して部屋を破壊して回ります。
他の作品に比べると仕掛けは小規模ですが、作品を見ると日本列島はかなり頑丈に作られており、どのように取り付けてあるのか気になるところです。
古事記には古代の神が日本列島を産んだと記載があり、本作はある意味神話のスケールに忠実だとも言えます。
やはり自宅で撮られた作品。古代の神に扮し、踊りながらワイヤーで富士山を伸び縮みさせています。一見ばからしい作品ですが、造形のレベルは非常に高く、計算された作品です。
現在も続いているらしいプロジェクト。何の変哲もない石に「肉を貼り付けてウジをたからせる」「チンドン屋に宣伝してもらう」などして経験豊富な「偉い石」にしていくという企画です。
他の作品のようなコスプレや仕掛けはないのですが、映像のクオリティは高く、バカらしさは健在です。
塩田千春展のあとなのでスルーする人もいるでしょうが、見逃せない企画です。★★