21_21 DESIGN SIGHTの「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」【2020年10月16日(金) – 2021年3月7日(日)】を見てきました。
21_21 DESIGN SIGHTは毎回ベストキュレーターに展覧会を任せているのですが、このドミニク・チェンという方は僕は知らなかったし、説明を見ても何をしている人なのかよく分かりませんでした。
Wikiによると情報学者とのことですが、おそらく日本でいうと、かつて同じくここのキュレーターをしたことがある中沢新一氏のようなジャンル横断的な研究をしている人なのでしょう。
キュレーターだけでなく、今回展示に参加している面々も聞いたことのない人ばがほとんどです。
アーティストというよりチェン氏の研究仲間が集まったという印象です。
ジャンル横断的な展示を会場にも反映させているのか、会場構成も自由な感じです。
多くの柱?を立てて、空間を緩やかに仕切っています。明確な動線はなく、観覧車は自由に回遊する形式です。
特に面白かったものをピックアップしてみました。
世界の翻訳できない、独特な表現を集めた展示です。
視覚障碍者にスポーツを楽しんでもらうというものです。
柔道、フェンシング、野球が展示されていました。
柔道の観戦は晴眼者2人といっしょに布を持ち、一緒に鑑賞して布を通して臨場感を伝えるというもの。
フェンシングは木製のアルファベットの置物を絡ませ合い、振りほどこうとする者とほどかれまいとする者が争います。
アルファベットの形によって戦略が変わるとのこと。
野球はピッチャーは紐を引き、バッターはピッチャーの肩に手を置き、そこから伝わる紐を引くタイミングを予測し紐を捕まえる。掴んだ紐の部分によってヒット、ホームランなどが決まります。
いずれもプロの意見を取り入れた本格的なものです。
なぜか縄文土器にまつわる作家が4人もいましたが、面白かったので紹介します。
建築も伝わりにくいものを伝えるコミュニケーション手段ということでしょうか?
でも確かに今回の会場はつまらないものが多い・・・
数少ない知ってる作家でした。
3パターンの鑑賞から逃れる作品の展示。
これは近づくと上に逃げていく絵画です。
これはネットサーフィンで距離を取ることを訴えてくるタイプです。
仏像がうるさく距離を取ることを訴えてくるこの作品が一番面白かったです。
ディスコミュニケーションもコミュニケーションの一形態ということでしょうか?
葉の孔辺細胞を本当に唇に見立ててコミュニケーションを図るというもの。
雑コラみたいで結構不気味でした。
ぬか漬けの出来具合を自ら判断し、勝手に漬けるにいい環境に移動するロボットの開発です。
他にも色々コミュニケーションできるようですが、反応はイマイチでした・・・
コロナが流行っている中、コミュニケーションが重要視されているので、タイムリーな展覧会でした。
学者とアーティストの越境的な展示そのものも、トランスレーションだったかもしれません。★★
ちなみに、ドミニク・チェンが何やってる人かよくわからなかったので、読んでみましたが、やっぱりよく分かりませんでした。
でも本展がアートとサイエンスのコラボではなくて、並列展示だということが分かりました。また本書からも言語や認識に関する興味が分かります。