• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★建築写真を建築する「八木夕菜 NOWHERE」

ポーラミュージアムアネックス(銀座)の八木夕菜「NOWHERE」【2018年6月15日(金)-7月8日(日)】を見てきました。

八木夕菜「Mount Fuji」

一階にも彼女の作品が置かれています。

八木さんは建築事務所勤務という珍しい経歴の持ち主です。なので作品は単に建築を写真に撮るだけでなく、その立体造形には建築的センスを感じました。

会場は新旧の作品群が展示されているだけでなく、プロジェクターを使って会場そのものが一つのインスタレーションになっています。狭い会場ですが、かなり見ごたえがあります。

八木夕菜「ひとつになる世界」

ガラスの中に複数の写真を閉じ込め、見る角度によって見えるものが変化する作品です。正面には日本の伝統的な合掌造りの農家が写っていますが、底にはガラスのピラミッドが写っています。

建築は異なる素材を繋ぎわせて作りますが、さすがに合掌造りとガラスのピラミッドをくっつけた例はまだありません。形の類似に注目した、芸術作品ならではの思考実験です。

八木夕菜「ANONYMOUS」

こちらは建物の一部にだけガラスを置いた作品。

ガラスは建物の看板「NEW YORKER」の看板の上に置かれていますが、看板こそが建物の性格を決めていることの皮肉でしょうか?

他の作品に比べ明確なメッセージ性がどこかユーモラスにも感じます。

 

八木夕菜「くずれゆく世界」

建物の写真が水面のゆらめきによって歪んでいます。

世界各地の建築を撮っていますが、国内ではメガストラクチャーで未来的生活を提唱した兵庫県芦屋市の芦屋浜団地を採用。

実際には阪神大震災に耐えた本建築を「くずれゆく」としたのは未来への夢の崩壊を示すのでしょうか?

八木夕菜「くずれゆく世界」

こちらはサン・ピエール・サン・ポール大聖堂。元から大げさな建物なので、画像を歪めてもあまり違いが際立たないような・・・(^-^;

 

八木夕菜「wrinkles of architecture」

芦屋浜団地はこちらの作品でも使われています。

プリントした写真が贈り物の包装紙のように使われています。

銀色に光る幾何学的な団地群は包装紙に以外と合うかも。

 

単に撮った写真を展示するのではなく、写真を作品の単なる素材のひとつとして構築していく手法が興味深かったです。★

 

 

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