2018年8月18日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★建築図鑑②十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ

建築評論の第二回は「大地の芸術祭」の中核施設のひとつである「森の学校キョロロ」です。

 

設計は手塚貴晴+手塚由比。これまでは住宅や幼稚園など中・小規模施設の設計が多いですね。よくメディアで目にするのは屋上で園児が走り回れるようになっている「ふじようちえん」、あと首都圏でいつでも見れるのは箱根彫刻の森美術館内の施設、「ネットの森」ですね。

(左)ふじようちえん(右)箱根彫刻の森美術館 ネットの森

実際に訪問して見ると、本で見ても分からない魅力も発見しました。3つに分けて見ていきたいと思います。

 

ここがすごい➀雪と共に生きる建物

日本の豪雪地帯の建築は雪への対応がまず第一の問題です。これに対してどこまで斬新かつ合理的な対応ができるかがまず評価の第一ポイントになるかと思います。

ジミー・リャオ「Kiss & Goodbye」

もっとも一般的なのが、写真のようにカマボコ屋根にして雪を落としやすくすることです。

しかしキョロロは雪に埋まるに任せるという大胆な方針を取りました。キョロロの外装材である耐候性鋼板潜水艦のごとく2000tの荷重に耐え、また夏冬の温度変化に対応し、夏冬で2cm伸び縮みします

毎年の温度変化と雪に耐えることにより、鉄板には独自の風合いが出てきます。安藤忠雄の「いつまでもピカピカコンクリート」の次の世代ともいうべき、積極的に建物の遍歴を見せるスタイルです。

ちなみに上の写真の床の鉄板は遠藤利克さんの作品「足下の水」。鉄板の下の水を感じる作品ですが、分かるわけありません(笑)しかし水、土など自然を彫刻に取り込む遠藤さんの作風にこれほどマッチする空間もそうないですね。

ここがすごい②機能と融合した設計

「新建築」より

キョロロは合理的に作られているだけでなく、自然博物館兼美術館としての機能面も充実しています。

図面を見てわかる通り、長細い建物で、空間がどこまでも連続してます。この細長い空間を生かす展示を作るのは学芸員さんの腕の見せ所です。でも正直狭かった(笑)。子供は曲面をもった長い廊下というのが好きで、この辺りは多くの児童向け施設を設計している手塚さんならではですね。また冬場は雪の断面を見せるという教育効果もあります。

庄野泰子「キョロロのTin-Kin-Pin —音の泉」

キョロロの展望台に到る階段部分に設置された音楽インスタレーションです。ただ外を眺めるだけでなく、そこに到る階段でも記憶に残る体験ができます。サービス精神あふれてますね。

 

ここがすごい③キャラ立ち

実はこの③が僕が一番すごいと思った点です。新素材を使ったり、全く新しい空間を実現した建物は沢山あります。しかし多くは建築、アート界内の出来事で終わってしまい、一般人に分かる形で提示されることは稀です。

ヘルシンキ現代美術館キアズマ

フィンランドの公共建築は愛称が付くのですが、日本でここまで現物にマッチした愛称が付くのも珍しいです。キョロロとは旧松之山町の町の鳥アカショウビンの鳴き声に由来するそうですが、建物の形態からエサを探す、蛇のようでもあり、冬は展望台以外埋まってしまうので、潜水艦が外を伺っているようにも見えます。

大地の芸術祭ではアクセスの良さや空間としての使いやすさから農舞台キナーレの方がアートファンの注目が高い気がします。

まつだい「農舞台」

越後妻有里山現代美術館[キナーレ]

 

しかし僕はこのキョロロこそ、日本の里山にふさわしいサイト・スペシフィックな建築だと思います。ナンコレ度★★

 

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