2018年12月19日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★★建築図鑑①犬島精錬所美術館

僕が気になった建築を勝手に評価するシリーズ。記念すべき第一弾は犬島精練所美術館です。

犬島は瀬戸内海に浮かぶ人工50人ほどの島。1周1時間もかからないような小島です。精練所美術館はかつてこの島で操業していた精錬所の跡地を美術館に改造したものです。

 

設計者の三分一博志さんは瀬戸内で主に活躍されている方。

神戸の六甲枝垂れとか有名ですね。

昨年はギャラリー間で展覧会もありました。

展覧会では三分一さんが最近では珍しい、徹底した土地や気候の検証を行う建築家であることが紹介されていました。このような姿勢が犬島のプロジェクトに選ばれた理由にもなるのでしょう。

「犬島精練所美術館」の模型。煙を送って大気の流れを検証できる。

六甲枝垂れの実物大モデル。雪の付き方を実験した。

 

僕がこの建築に注目したポイントが3つあります。

①環境建築

設計者の三分一氏は地域格差の問題に対して、犬島で自己完結のひとつのモデルを示しました。美術館は水や大気を循環させ、自己完結を目指して設計されています。

煙突までの高低差を生かして空気を循環させ、自然のエアコンとしています。

また建築材も犬島の石を使うなどかなり徹底しています。

 

②産業遺産の改装

産業構造の変化に合わせて建築の用途変更は世界的な流れです。変更前の建物は学校と工場が2大勢力です。学校は少子高齢化ゆえに、そして工場は大規模生産設備の需要が減ったこと、そしてモノそのものより考えや思想に価値を置くように人々の意識が変化したために無用の長物になりつつあります。

工場の用途変更は発電所を改造したロンドンのテートモダンが有名です。

テートモダン。発電機が合った空間が巨大な吹き抜けになっている。

他にはイタリアの自動車工場をショッピングモールにしたリンゴットや、

ウィーンのガスタンクを商業施設にしたガソメーターなどが有名です。

 

ただ犬島はこれらの建物とは趣が異なるようです。精錬所をドラマチックな広大な空間にせずに、むしろ狭い空間に分割しています。このことが柳幸典氏の作品や、三島由紀夫氏の世界観とマッチしています。

新建築2008年5月号より。延々と続く狭く暗い廊下の先に三島氏の作品をモチーフにした柳氏の作品がある。

 

建築と芸術作品が高度に融合することにより、そこでしか得られない体験が生まれます。

 

③アースワーク

「アースワーク」とは地球そのものを作品に取り込むことをいいます。日本では川俣正さんや磯部行久さんが有名です。

川俣正「工事中」代官山のヒルサイドテラスの屋上を角材で埋め尽くす。

磯部行久「土石流のモニュメント」砂防ダムの周囲に土石流の被害を被った範囲を黄色いポールで示す。

 

犬島の美術館では精錬所をすっかり改造してしまうのではなく、廃墟のままかなりの部分を残しているのです。しかも遊歩道を設けて、果樹園を作り、廃墟を美術館の延長線上に捉えています。

僕が行ったときは夏だったので、オリーブの木にびっしりコガネムシがついていました。

最小限の三分一さんは自分の設計した建物ではなく、日本や島の歴史そのものに目を向けてほしいと思ったに違いありません。

 


それでは独断と偏見で犬島精練所美術館に評価を下してみたいと思います。

芸術性・・・単純に見た目に芸術性やインパクトを感じるか?

体感性・・・外見だけでなく、実際に行って見て感じる体験があるか?

先進性・・・新しい技術が用いられているか?、これからの世の中に貢献する試みがあるか?

性能 ・・・建設コスト、環境への影響、エネルギー効率、経済効果。目的にあった設計 になっているか?

 

これらの項目を各5点として、20点満点で総合評価を下したいと思います。


芸術性・・・3点。改修建築でそのままの部分も多いので。

体感性・・・5点。実際に行かないと分からない部分は多いと思います。建物においては芸術作品との一体感、加えて周囲の遊歩道と犬島自体も見どころが多いです。

先見性・・・5点。イメージ先行のエコ建築が多い中で、実現可能なアイデアになっています。日本は島国なので応用性も高そうです。

性能 ・・・4点。地産地消、身の丈に合った観光地化、エネルギー循環など建物単体を越えて島そのものに新しい経済モデルを提供しています。しかし現実として人気においてすぐ隣の豊島美術館に負けてるのでマイナス1とします。

 

総合点・・・17点。

ナンコレ度★★★★

 

 

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