国立国際美術館で開催中の「福岡道雄 つくらない彫刻家」(会期: 2017年10月28日(土)― 12月24日(日) )を見てきました。
建物は大阪の中心、中之島にあります。1階は入り口だけで地下1~3階に各施設がある完全地下の建物です。上下に開けたホールにアレキサンダー・カルーダーの巨大モビールが映えますね。
福岡道雄(1936~)氏は大阪出身の彫刻家。先年亡くなった赤瀬川原平氏が1938年生まれなので、戦後第一世代、在命の芸術家では最長老になりますね。
「つくらない彫刻家」といいながら、一体何を展示するのか、楽しみにしていましたが・・・
普通に作品作ってますね(笑)この部屋のみ撮影OKでしたが、ここに福岡氏の代表作であるバルーンシリーズが集中して展示されています。
風船部分は石膏、人型は藁人形のノッペラボーです。
「何もすることがない」は近づくとゴミを固めたジャンクアートであることが分かります。
にしてもかなり厭世的なタイトルですね・・・この作品もジャンクアートといってもティンゲリーのように楽しくもなければ、セガールのような文明批評も感じません。ちょっとギーガーのエイリアンみたいではありますが・・・
さて、この福岡氏のはじめの作品SANDシリーズからバルーンシリーズ、そして次の巨大な画の彫刻を作るまでに、美術界にどのような動きがあったか合わせてみていきたいと思います。
1949 第1回読売アンデパンダン展
1954 「具体」結成
1956 具体派によるアンフォルメル展覧会
1957 九州派結成
1960 ネオダダオーガナイザーズ結成
1963 ハイレッドセンター結成
1968 もの派の関根伸夫が「位相—大地」を発表
1970 大阪万博
こうしてみると、美術界の流行に全く影響を受けてないことが分かります。特にアンフォルメルやもの派はそのグループに属してない作家も同時代には修作っぽい作品を残していることが多いです。また福岡氏がハイレッドセンターのようなパフォーマンスに手を染めた形跡もありません。
・・・というと立派に独立独歩の道を歩んでいるようですが、作品を見る限りそんな印象は受けません。その後も「何をしても仕様がない」などネガティブな言葉をひたすらFRPに刻んだ作品などを作り、最後に作品を作らないことを宣言したり、2010年代になってゴマ粒みたいな作品を発表したりして、展覧会はそのまま終わります。
正直国立の美術館の贅沢な空間を使ってでここまで徹底して厭世的な個展をやるのも珍しいです。批評には「作らないことを貫いた作家」とありますが、意味が分からない上に貫いてもいません。いったい学芸員さんはこの展覧会で何を感じてほしかったのでしょうか?まあ福岡氏は元祖かまってちゃんとして若者の共感は生むかもしれませんが・・・
見に行けば国が芸術を助成することについて深く考えることになることは請け合いです。
葉音2017年11月8日 3:07 PM /
こんにちは、初めてコメントします。 この美術展、一昨日私も行きました。 なんとなくですが、彫刻作品ではなく、タイトル通りを、写真や作品を通して垣間見たのかなと思います。 どう鑑賞していいかわからず戸惑いましたが、音声ガイドの貸し出しがあったので試しに借りてもう一度来週挑戦してみようと思います。笑