2018年12月16日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★安藤忠雄英雄伝説➀野望編

国立新美術館(乃木坂)の「安藤忠雄展―挑戦―」《2017年9月27日(水)〜 12月18日(月)》を見てきました。

草間彌生展ほどではありませんが、大変な人出でした。特に前半の住宅模型がずらっと並んでいるスペースはかなりの行列。普通の建築展と違って客層も幅広く、改めて安藤忠雄が国民的建築家であることを実感しました。

 

展示構成は「原点/住まい」「光」「余白の空間」「場所を読む」「あるものを生かしてないものを作る」「育てる」の6セクションに分け、建築模型だけで大小87作品もの大量出品。

 

のみならず、今回は大阪府茨木市にある「光の教会」の実物(!)を制作したほか、

 

安藤さんの作品が8つもある瀬戸内海の直島のインスタレーション作品、

 

さらに、一度販売した住宅を引き取り、改修、増築をしながら現在も設計事務所として使い続けている大淀のアトリエの内観再現など目玉展示も目白押しです。

 

このような物量的に過剰な展覧会なので、後半は食傷気味で結構空いてました(笑)。

とはいえ良しにつけ悪しにつけ安藤忠雄は建築を考える上で避けては通れない問題。なので今回のように安藤さんが全てをさらけ出してくれた展覧会は彼の功罪を考えるには最良の機会です。

そこで展覧会のレビューを➀黎明編 ②回天編 ③落日編の3つに分けて、安藤さんの良い点、悪い点を考えてみました。

 

➀黎明編

ギャラリー野田

今回の展覧会で前半で大きく取り上げられていたのが安藤さんの住宅作品です。安藤さんは現在も年幾つか住宅設計を請け負っているらしく、住宅だけを紹介した本も出てます。

初期は有名な「住吉の長屋」をはじめとして、ほとんど階段だけの「ギャラリ―野田」など狭小住宅が多く、面白かったのですが、

マンハッタンのペントハウス

後半は金持ち向けの広大な住宅になってて、ニューヨークの高層ビルをガラスボックスでぶち抜く(!)マンハッタンのペントハウス」以外はあんまり見るべきところはなかったです。

また、会場に来てるお客さんの反応から見ても、安藤さんの住宅は住みにくいというコンセンサスが得られました(笑)

KHギャラリー

ただ、安藤さんの住宅作品が1970年代の初期のものを含め、よく保存されている(逆に商業施設などは壊されてるのが多いそうですが)のも事実です。「ギャラリー野田」「KHギャラリー」「日本橋の家」など展示空間に転用されているものも多数あります。

安藤さんは家を設計した客に対してボードなどを張ってコンクリート打ちっぱなしのイメージを損ねないように「指導」するという噂があります。真偽のほどは定かではありませんが、安藤さんが売ったら売りっぱなしではなく、その後も過去の作品に対して関心を持ち続けているのは事実のようです。

竣工21年後に取り壊された伊東豊雄の「代表作」「中野本町の家」内観はひたすら廊下が続くという当時はやりのガランドウ空間でした。

他の有名建築家の中には初期の住宅作品が理念先行で設計した結果あっという間に取り壊されることが多くあります。安藤さんの方針はブランドイメージを維持する効果があると共に、既存インフラを活用しようという現在の世相にも合致し、もっと前向きに評価されてもいい点です。

淡路夢舞台

大阪府立近つ飛鳥博物館

同じことは公共建築にもいえます。淡路夢舞台、大阪府立近つ飛鳥博物館など、安藤さんの関西の建物は木々に囲まれて建つものが多く、周囲の森林整備が建築のイメージを維持するのに必要なものが多くあります。

大阪マルビル

のみならず、安藤さんの緑化プロジェクトの中には大阪マルビル梅田スカイビルなど自身が設計した建物でなくても、緑化を主導しているものもあります。

安藤さんは東京や海外での仕事が圧倒的多数になった今も大阪に事務所を構えています。建築家も人気商売ですので「虚」と「実」の部分があります。既存のインフラを整備していこうという方針は安藤さんの「実」の部分で、この点が彼を国民的建築家に、そして世界の建築家に押し上げた力になっていると思います。

 

 

 

 

 

 

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