今回は丹下健三氏設計の横浜美術館に注目してみたいと思います。

丹下健三「香川県庁舎」

丹下健三さんは戦後の現代建築家としては最も著名で、最も成功した人ですね。代表作は初期の香川県庁舎や、

丹下健三「東京都庁」

後期の東京都庁などが有名です。

しかしこれだけ多くの建物を設計していながら、丹下さんが設計した現代美術を扱う美術館はこの横浜美術館が唯一です。

横浜美術館は1989年(平成元年)の横浜博覧会のパビリオンとして開館しました。周りの建物も同じ時期に竣工しているので、一体感がありますね。横浜は日本でも有数の都市計画が成功した都市でもあります。

立面図(新建築より)

9階展望台(新建築より)

中央の塔は収蔵庫になっており、最上階は展望ギャラリーになっているようです。ただ展望台に登ったことはないので、閉鎖されているのかもしれません。

2階平面図(新建築より)

動線計画は中央に巨大なグランドギャラリーを配し、周りに形の違う展示室を配置しています。丹下さんによると、「自分の位置が確認できると同時に、均質な空間の続く単調さを避けるよう」にしたとのこと。しかし展示計画上グランドギャラリーのまわりを一周できる機会がないのは残念です。

グランドギャラリー

丹下健三「草月会館」

デザイン的には特にみるべきところはないです。グランドギャラリーは丹下さんの過去作、草月会館の石庭(イサムノグチ設計)に似ますし、

外観も彼の過去作からの変更点は特にありません。丹下さんはもともと優秀なスタッフにデザインさせ、自分は選ぶだけというスタイルだったので、その出来もスタッフ次第だったみたいです。

丹下健三「広島平和祈念資料館」

広島平和記念資料館などに見れるように本質的に都市計画の人なので、そもそも細部のデザインにあまり興味がなかったように感じます。人々の憩いの場とか考えたこともなかったんじゃないでしょうか?なので、グランドギャラリーも美術館前の広場もほとんど作り込まれていません。「広場なんて空間と彫刻があればいい、あとは俺の建物を眺めとけ」殿様商売的気質を感じます。

何を作っても市民に親しまれるというより建築家の偉大さを思い知らされるような建物になってしまうのは戦前から政府と一体になって仕事をしてきた建築家の宿命でしょうか?

横浜トリエンナーレ2017の様子

しかしこの親しめなさとは裏腹に、施設の活用度は思いの外高いようです。周囲が地下鉄直結の商業施設やレジャー施設に囲まれていることに加えて、飾りっ気がないグランドギャラリーや美術館前広場も展示やイベントには使い勝手がよさそうです。特にグランドギャラリーの自由度は東京都現代美術館より遥かに上だと思います。丹下さんがこのように使われることを想定していたかは疑問ですが、全体の都市計画がしっかりしてれば、建築のデザインなど些細な事なのかもしれません。