隈研吾さんと清野由美さんの対談本「新・ムラ論TOKYO」を読みました。
以前紹介した「新・都市論TOKYO」の続編です。
前作が汐留、丸の内、六本木、代官山と都心の洗練された街を回ったのに対して、今回は下北沢、高円寺、秋葉原、小布施と雑然とした街が多いです。そして小布施はタイトルにTOKYOと入ってるのに長野県ですね(笑)
前作ではリスク回避でテーマパーク化した汐留、三菱地所の優等生的回答の丸の内、森稔の個性が発揮された六本木、ハイソな人たちが自分たちだけのユートピアを作った代官山と結構明確にキャラ分けできると思います。そしてそれぞれの良い点と悪い点も明確に述べられています。例えば代官山の周囲にも高層マンションが進出してきており、将来も今の光景が保たれるとは限りません。
今回紹介される下北沢、高円寺、秋葉原も基本的には同じ構図です。例えば秋葉原は現在でも個性的な町ですが、それでも大規模開発は多数行われており、駅前もクロスフィールドやヨドバシカメラ、レム秋葉原など高層ビルが多数建っています。
このような光景が立ち上がってくる原因として、本書は田中角栄の列島改造を挙げています。
田中角栄の発想は出身地の新潟に必要な開発を全国津々浦々に適用するというもので、田舎の生活を向上させるには有効ですが、首都圏の街を個性的にするのには不適切です。
さらに都市計画の方法としてゾーニングが適用されたことも原因です。これは場所によって工場、住宅地、商業施設など作れる建物を制限するという手法で、決まりきった駅前や郊外ができる要因となっています。
その点、小布施は確信犯的に列島改造やゾーニングから背を向けたことが成功の要因となっています。また他の街と違い、経済的効率だけでなく文化の促進にも力を入れているのも例外的です。
話は変わりますが、この本、隈さんがマニアックなスポットについて語る、建築本としては相当レアな珍プレーが続出します。
下北沢の社会科学系古本屋「気流舎」や高円寺のインディーズライブハウス兼CDショップの「円盤」などはいいほうで、
秋葉原ではメイドカフェや「すれちがいの館」についてまで考察が入ります。
ある意味隈研吾ファンは必読本ですね(笑)