練馬区のちひろ美術館・東京で開催中の

奇喜怪快 井上洋介の絵本展(2017.8/24-11/5)を見てきました。

建物はこじんまりとして、閑静な住宅街の美術館といった雰囲気です。

井上さんは1931年生まれ。初期は赤瀬川原平氏などで有名な読売アンデパンダン展に出品したり、寺山修司さんの舞台美術を担当したり、前衛芸術を中心に活動していましたが、のちに絵本作家として有名になります。今回の展覧会では、絵画と絵本両方が楽しめるのが嬉しい点です。

井上さんといえば、「くまの子ウーフ」が有名です。原作は神沢利子さんで井上さんは絵のみ担当ですが、ウーフの何にでも疑問を持つ点や、抽象的な思考は井上さんの作品世界に通じるものがあります。そして井上さん自身の作品は、思いついた彼自身も絵にするのが困難なような、奇想に溢れたものになっています。ここでは井上ワールドの登場人物たちを独断でランキング形式にして紹介したいと思います。

 

10位.ふるおうねずみ

誰も知らないけど僕だけが知っている家の屋根裏に住んでる「古くて大きいねずみ」。家の中に謎の生き物が住んでいるという妄想は日本の妖怪から現代のパニックホラーまで人類共通の妄想ですが、このふるおうねずみは子供と遊んでくれる楽しいねずみです。

9位.井上邸

井上さんのご自宅も紹介されていました。山田芳裕氏の茶道漫画へうげものに出てきそうな数寄屋造りです。

また猫屋敷であることも紹介されていました。

8位.進まない電車

「でんしゃえほん」より。かつては路面電車が大量に走っていたせいか、電車は井上さんの路上観察の中でも気になる存在だったようです。同絵本には「一人用の電車」、「ラーメンの屋台電車」、「でこぼこ道を走る電車」など井上さんの妄想がさく裂してます。

 

7位.卵の埋葬

漫画作品「井上洋介漫画集 サドの卵」より。卵といえばダリも自身の美術館に卵を大量に載せてますし、芸術家おなじみのモチーフです。

井上さんもこの作品で卵の散髪、卵を食べる卵、卵を設計する卵など日常生活のあらゆるシーンに卵を挿入しています。

6位.箱の住民たち

「井上洋介漫画集 箱類図鑑」より。箱もまた安部公房の「箱男」のように愛用する(?)芸術家は多いです。「コンビニ人間」の表紙にもなった金氏徹平さんの作品はこれが元ネタでは?と思いました。

5位.ちょうつがい犬

「ちょうつがいの絵本」より。ちょうつがいの利便性を普及する絵本で、生活のあらゆるシーンに大小のちょうつがいが使われます。絵本では「曲がるとき便利だね」とありますが、犬の表情からはへんてこな身体にされてしまった悲哀を感じます(笑)

 

4位.卵100個分のにわとり

『くまの子ウーフ』より。また卵です。ウーフの「にわとりは卵を毎日生むので、ニワトリは卵でできている」という妄想から生まれました。つま先まで小さい卵が入っているのが面白いです。

 

3位.団子町の住民

「電車に乗って団子の街に行ったらみんな3連続になってる」というお話。このように話をとことんまで突き詰めるのが井上さんの手法です。

 

2位.自転車男

「まがれば まがりみち」より。「日暮れの町の曲がり道 何が出るのか曲がり道」のセリフのあとにとんでもないものが表れる、という繰り返しです。ビルと高速道路が自転車男の巨大感を表していますが、なんだか特撮めいても見えます。夕暮れの暗い感じにも拘らず、不思議と怖い感じがないのが不思議です。同作品には「大蓑虫」「煙突男」「大モグラ」「一番星」など次々魅力的なキャラクターが登場します。

 

1位.わけの分からないやつ

「だれかがぱいをたべにきた」より。大好きなパイを食べようとしたおばさんに麦わら帽子が被さり、さらに色んなものがパイを横取りしようとやってきます。視界を塞がれてもパイ泥棒の正体をピタリと当て続けたおばさんですが、最後にやってきた彼(?)の正体は分からなかったようです。

 

また最後の部屋には井上さんが絵本と並行して書き続けていた絵画も展示されてます。底抜けに陽気な井上さんの世界観ですが、戦争体験があってこそ本物の明るさが得られるのかも知れません。

絵本の展覧会はほとんど見ないのですが、こんなにヘンテコな世界があるとは知りませんでした。ナンコレ度★★★