横浜美術館などで開催中の横浜トリエンナーレ(2017年8/4-11/5)を見てきました。
実はヨコトリは2008年以来、久しぶりの参加です。というのもヨコトリには従来あまり期待していなかったのです。
日本の芸術祭は横浜、愛知などの都市型と、妻有、瀬戸内などの地方型があります。地方型は場所性を意識した作品が多いのに対して、都市型は普遍的なテーマが多く、難解に感じていたのです(逆に地方型は観光化している、批評性がないなどの批判もあります)。
今回の展示でもジョコ・アヴィアントの巨大なしめ縄やアイ・ウェイウェイのカニの大群など「?」な作品がたくさんありました。ミスターなどもはや大御所化した作家はあまり新鮮さを感じませんでした。
ただ多様な作品が集まるのが芸術祭のいいところ。ここではじっくり見てほしい気になった作品をピックアップしてみました。
(横浜市開港記念会館)
作品自体は去年のBankART1929の展覧会「ワンダリング・ポジション」でも出品されたもの。ただあちらは展示室内にトンネルの通路を挿入するというものでした。
それに対して今回はビルの地下での展示になり、古いビルのため照明を消すだけで相当雰囲気があります。
殺風景で真っ暗な地下室は大戦末期の大本営のような終末的雰囲気に溢れており、憲法9条をLEDで点灯させる「アーティクル9」は英霊が語りかけてくるようでした。
この作品のみ別会場にあるためスルーしがちですが、一見の価値があります。
(横浜美術館)
映像作品。「AIが柴犬の姿をした使者を使って、蘇生したセレブにストレスをかけ続けるとどうなるか実験する」という筋立て。説明されても全く分かりませんが内容も意味不明です。ただチープな映像が独特な雰囲気を作っています。大量に登場する金のリードを付けた芝犬が不気味です。
(赤レンガ倉庫1号館)
重量挙げの選手がパブリックアートの銅像を持ち上げようと試みる映像作品です。バラエティ番組のような演出が施され、明らかに地面に固定された銅像を無理やり指をねじ込んで持ち上げようとしたり、「歴史の重みを感じた」などナレーターと重量挙げ選手のトボけた掛け合いが面白いです。なぜか子供が大勢見入ってました。
(赤レンガ倉庫1号館)
宇治野宗輝は箱根の彫刻の森美術館で2013に紹介されてましたが、スペースを取るせいか、人気の割にはなかなか展示されない作家ですね。
ただ最近は森美術館や寺田倉庫でも紹介されているので、ブームが来てるのかも知れません。
これまでは楽器と日用品を組み合わせた自動演奏ロボットのような作品が多かったですが、今回はとある地方都市における経済発展史の映像ドキュメンタリーと組み合わせることで、作品に使われている家電に思いを馳せる構成です。
作品を構成するのはミキサー、自転車、ワイパー、掃除機など。各楽器の配置により観客は郊外都市に迷い込んだような気分になります。
全く知らない作家さんだったので、今回の一番の収穫にして一番の問題児です(笑)。木版画がメインのようですが、独特過ぎる世界観に圧倒されます。
中央には霊柩車(?)の四方に作品が飾られています。風刺というにはあまりにエキセントリックな世界観です。
周囲には「学校=管理=戦争」みたいなテンションで描かかれた作品が多数展示されています。
中でも気に入ったのはこの作品。時間割に乗って受験戦争に向かう学生たち(?)
気になったので調べてみると作家さんのブログも独自の世界観でした。
ディスリンピアなる構想をお持ちのよう。杉本博司氏も世界滅亡をテーマに展覧会してましたし、彼女には期待できそうです!
美術館の壁に無限に続くトンネルを出現させました。要はだまし絵ですが、クオリティが高すぎて実物と虚像の境目が全く見えません。この場所の照明なども綿密に計算された作品に違いありません。
こちらも同じ作家さんの作品です。床に置いただけで地下トンネルを出現させるという手法がクールです。トンネルの素材もSF映画のようで素敵です。だまし絵は森美術館で展覧会も行うスイミングプールで有名なレアンドロ・エルリッヒが有名ですが、リアリティという意味ではこちらが圧勝です。
なんだかよく分からない作品も多いですが、一見の価値はある展覧会です。ナンコレ度★★★
★★水族館劇場に見る「見世物」の系譜 – 博司のナンコレ美術体験2017年12月5日 12:14 AM /
[…] これは同時開催の「横浜トリエンナーレ2017(以下ヨコトリ)」の関連企画のひとつで、寿町で開催されました。 […]