2018年6月24日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

遠藤克彦事務所で大阪新美術館を考える

生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2017(10月28、29日)の一環で遠藤克彦建築研究所の大阪事務所に行ってきました。

場所は中之島から川を挟んで南側、国立国際美術館から歩いて5分ぐらいの所にあります。

 

遠藤さんはこれまで小、中規模住宅を中心に設計していきましたが、今年2021年開館を目指す大阪新美術館(仮称)の設計に指名され、一躍建築家のトップ集団に踊り出ました。この大阪の事務所も美術館設計のために新たに開設したものです。

 

事務所内は撮影禁止でしたが過去に設計した建物の資料、大阪新美術館のスタディ模型、コンペ資料などが公開されていいました。

こちらがその新美術館です。

地上階をピロティにし、すべての機能を2階以上に持ち上げて建物の浮遊感を狙っています。浮遊感を強調するため、建物の形状はあえて単純な黒い箱型にしています。

内観は外装の黒に対してシャンパンゴールドのような色合いにし、明るさを強調します。縦に大きく抜ける空間を設けるとともに、上階ではこの抜けた空間が十字に交わり中之島を囲む川を眺められるようになっています。

 

・・・などと書きましたが、僕はパッと見、普通過ぎるという印象を受けました。正直浮遊感とか縦横に視線が抜けるとかは使い古された表現ですし、中之島の眺めは素晴らしいともいますがそれらを眺める場所は無数にあり、新たに美術館の屋上にそれを設ける意義も分かりません。もっともこの眺望は大阪市の応募要件だったようですが・・・

 

 

そこで、大阪市のHPに他の応募案も掲載されていたので比較してみました。

 

・(次点)株式会社 日建設計 大阪オフィス

建物を持ち上げ、地上階をピロティにするというアイデアは遠藤案と同じです。

ただ日建案は遠藤案以上に地上階の活用を前面に押し出していました。このピロティ案は坂出人工土地、江戸東京博物館、東京ビックサイトなどこれまで無数に実施されてきましたが、どれも地上階の活用は不十分に感じます。

江戸東京博物館

今回の提案も上に載ってる建物が普通なので、イマイチ人々がここでイベントをやりたいと思わせる訴求力に欠けると思います。

 

・梓設計・RUR ARCHITECTURE DPC共同企業体

今回2次審査に進んだ5社はどれもカッチリした箱っぽい建物を作るとこばかりって印象でしたが、その中で唯一異質なのがこの案です。

中央のクリスタルっぽい構造物がインパクトがあります。その両側の建物も表面が凸凹してカルスト台地みたいでかっこいいです。「一見ポストモダンや脱構築っぽいが、実は合理的」という解決は日本っぽくて一番好きな案です。

 

・株式会社 佐藤総合計画

今回どの案もあのツッコミどころ満載の国立国際美術館との関係をどうするか、あまり語っていないようです。

国立国際美術館

僕としては国立国際美術館は(敷地の関係上仕方なかったのかも知れませんが)、建物を埋めた結果周囲との関係が切れてしまった失敗例だと考えています。この美術館とどう向き合っていくかもっと語って欲しかったです。

佐藤総合計画の案は国立国際美術館に向かい合う部分を完全に通路にしてしまっているので、両者の繋がりの強さは他の案より一歩抜きんでている印象です。ただ建物本体はやはり普通すぎますね。

 

・株式会社 槇総合計画事務所

正直「ああ槇さんっぽいな」という印象しかないです。事務所の人がそれっぽく作ったのでしょうか。なんだかCGにも力が無く、どこで勝負したいのかイマイチ分かりません。

 

まとめ

5案を比べてみると、遠藤案と梓案以外は何ら真新しさを感じませんでした。

どの案も建物のエネルギー効率を詳しくプレゼンしてましたが、これも大阪市の条件だったのでしょうか?このような堅実なコンペだと遠藤案が通ったのもある意味納得です。

 

色々不安もありますが、関西の芸術を盛り上げるためには新美術館は欠かせないものだと思います。

閉鎖的な美術館は展示方針も一部の愛好家のための閉鎖的なものになりがちです。新美術館が広く開かれたものになり、「大大阪」の隆盛を復活させる核になることを期待します。

コメントを残す