月500円でウルトラマンシリーズが見放題というウルトラサブスクを利用して、初代ウルトラマンを全40話見ていました。
初代ウルトラマンは成田亨や高山良策といった芸術家がデザインや造形をやっているだけあって、怪獣がアーティスティックだし、ダダやブルトンといったまんま美術用語や芸術家の怪獣も登場します。また1966年放送の本作は当時の都市や社会を反映した映像やエピソードが豊富で、そういった面からも興味が尽きません。美術、建築や都市、映像などの面から特に興味深かったエピソードを10選んでみました。
友好珍獣ピグモンが再登場したエピソードです。
ピグモンは突然銀座のデパートのおもちゃ売り場に出現し、買い物客はパニックに陥ります。
科特隊とデパートの店員との「怪獣を引き取ってくれ」というやり取りや、おもちゃ売り場で自分のおもちゃを見つけて驚いたり、遊び疲れて寝てしまったり、初代にしか見られないほのぼのとした絵が目白押しです。
ピグモンは終盤まで登場するのでチョイ役だった初登場の「怪獣無法地帯」よりピグモンファンにはこっちを推したいです。何よりおもちゃ売り場と怪獣という前代未聞の絵が見ものです。
夜の都市を破壊するテレスドンがとにかくカッコイイ!モノクロで表現された地底4万メートルにあるという地底人の世界の表現もクールです。
洗練されたデザインのテレスドンですが、ウルトラマンが登場すると得意の火炎放射を吐くまでもなくウルトラマンの華麗な投げ技を連続してくらい、スペシウム光線を撃つまでもなく、絶命します。これも初代ウルトラマンは後継作に比べるとプロレス要素が強く、このような展開もよくありました。
黄金怪獣ゴルドンは初代ウルトラマン後期に多く登場する地味怪獣の一匹ですが、映像で見ると黄金の長い首という絵的に映える要素をフル活用したシーンが多く、意外なまでに見ごたえがあります。またウルトラマンとの対決は金銀対決にもなり、これまた絵的に映えます。
伝説怪獣ウーは外観は毛むくじゃらの雪男に過ぎないのですが、真っ白な銀世界に出現した真っ白な怪獣という絵面は、後に多く登場するどの冷凍系怪獣よりもインパクトがありました。
また怪獣=伝説という幻想系エピソードも後に多く登場するのですが、どれも撮って付けた感があり、本エピソードに匹敵するのは同じ初代の「恐怖のルート87」ぐらいでしょうか。
亡霊怪獣シーボーズは体表を覆う骨の模様だけで目を表現するという抽象性の高いデザインが面白いです。エピソードは怪獣墓場から落下してくるシーボーズを故郷に返してあげようとする科特隊とウルトラマンに終始しており、シーボーズの故郷に帰りたいという悲しみとウルトラマンに抵抗する駄々っ子演技が光ります。「飽きれかえるウルトラマン」という前代未聞のシーンも登場します。
怪奇植物グリーンモンスは巨大な緑のゴミ袋に過ぎないのですが、こんな怪獣が最初期の第5話に登場する辺り、初代の攻めの姿勢が見られます。
ここまでに登場した怪獣はベムラー(二足怪獣)、バルタン星人(二足宇宙人)、ネロンガ(四足怪獣)、ラゴン(魚人)とそれぞれ背景もシルエットも異なるものの、後にオーソドックスになる怪獣、宇宙人の原型ともいえる者たちです。そのあとに出てくるのがこの「それ以外」ともいうべき怪獣です。
このあとアントラー、ドドンゴ、ペスター、ブルトンなど「それ以外」の怪獣が多く登場しますが、グリーンモンスはその初出として存在感を示しています。
映像を見ると下半身はズルズル引きずるしかないので、可動部はベコベコ中間部分で前に倒れる巨大な頭(?)と申し訳程度についた片腕のみ。
これでサボテンのようなシルエットを得るとともに、演技はブルブル振動したり、時計塔の音に怒って(?)破壊したりで感情を表現しています(植物に感情があるのか不明ですが)。
植物怪獣らしく(?)始めは等身大で登場し、光線銃のエネルギーを吸って突如巨大化。この不条理さも後のケロニア、ワイアール星人、バサラといった植物怪獣の不気味な系譜を作っていきました。
前半はウルトラマンには珍しいホラー回。ダダの音もなく出たり消えたり、意味もなく顔が変わったり、人間の標本を集めるという理解不能な行動など名にふさわしい不気味で不条理な行動が目を惹きます。
一方ウルトラマンとの対決では、「不滅の10大決戦」のも書かれている通り、ダダは長々と戦う割には全くいいところがなく、ウルトラマンへの攻撃は全て不発に終わっています。
他では見られないようなウルトラマンの大技が次々に決まるのも本エピソードの魅力です。
「恐怖の」という割には全く恐怖要素のないエピソードです。
二次元怪獣ガヴァドンAの不条理な存在が何よりも印象的です。
少年が土管に描いた絵が実体化した怪獣ですが、3次元になっても2次元要素が残っているのか、平面の絵が強引に歩いているような演技が素晴らしい。
着ぐるみのクオリティが低いのか、はたまた演技が雑なのか、この外観で這うのではなく明らかに「歩いてる」ような不自然な動きをするし、動くたびに鳴る効果音(?)も着ぐるみのよう(着ぐるみですが)。
また街の真ん中で怪獣が寝てていびきがうるさくて迷惑、という牧歌的なエピソードはもう二度と戻ってこない平和な日々を思わせるようなノスタルジイを感じます。現に子供のアイデアが実体化するという怪獣は帰ってきたウルトラマンのキングストロンなどがありますが、もはやこのような暢気な絵は生まれませんでした。
これも「それ以外」系の怪獣ですが、恐ろしく手が込んだ造形で、映像美が素晴らしい。外観はテトラポットとフジツボと心臓が合体したようなもので、アンテナのようなものを伸ばして超常現象を起こすのはフジツボの触角からです。
この触角を伸ばすシーンで見られるキラキラヌメヌメしている体表の表現も素晴らしい。
常に脈打っているのは心臓に見え、上が青く、腹(?)が赤いのは動脈と静脈を表わしているのかもしれません。
なにより驚きなのはこのテトラポットの化け物がゴロゴロ転がって移動することです。ちゃんと中に人が入って演技しているのです。流石にウルトラマンとの格闘シーンはないのですが・・・
トーテムポールのようなギャンゴの模様はカラーテレビ普及間もない日本において色の楽しさをストレートに表したものです。
脳波怪獣ということを表わしているのか頭の両サイドにねじれたハープのような耳が付いています。
これだけでも十分楽しい怪獣なのですが、ギャンゴはウルトラマン屈指の名演技で、まず等身大でホテルの客やスタッフを驚かせて悦に入り、巨大化した後はウルトラマンとコメディじみた戦いを演じます。ウルトラマンをだまし討ちして上に座ったり、海に落ちたウルトラマンを馬鹿にしたり。ウルトラマンの真似をして飛ぼうとしたり、スペシウム光線を撃とうとしてスパークを起こして自分で驚きます。
ウルトラマンをつられてくすぐり攻撃や水かけ攻撃を繰り出し、ギャンゴのスペシウム光線はイヤイヤポーズで撃つのをやめたり、すっかりギャンゴペースです。
ウルトラシリーズは国際問題を扱った「故郷は地球」や人間の心理を突いた「禁じられた言葉」などが評価が高いですが、そういった真面目エピソードが映えるのも脱力回や不条理回があるからこそだと思います。なんでもありのおおらかさこそ初代ウルトラマンの魅力だと思います。
なべやきうどん2022年12月12日 11:48 AM /
こんにちは。初代ウルトラマンが好きで、ブルトン、ガヴァドン、ギャンゴ、ペスターなどが特に好きな怪獣なので、それらをご紹介いただいて嬉しくなりコメントさせていただきました。 ギャンゴのカラフルさと仕草の可愛らしさ(?)は見ていてほのぼのとさせられるのは私だけでしょうか。ゴーギャンから名前が取られたのか?という説を見ましたが真相は如何に。 専門知識はありませんが、ギャラリーを回ることを趣味としておりますので(私は京阪神ですが)、美術に詳しい方からのアプローチというのも興味深く拝見させていただきました。 長くなり申し訳ありません。 良い年の瀬をお過ごしください。