千葉市美術館の 「1968年 激動の時代の芸術」【2018年9月19日(水)~ 11月11日(日)】を見てきました。
平成の終りという節目もあって、50年前の1968年前後のアートシーンを振り返ろうというものです。
短いスパンを扱っているにも拘らず14もの章が設けられています。
その内容は
「1968年の社会と文化」「美術界の1968」「1968年の現代美術」「環境芸術とインターメディア」「日本万国博覧会」「反博の動きと万博破壊共闘派」「トリック アンド ヴィジョン」「アンダーグラウンドの隆盛 演劇・舞踏・実験映画」「イラストレーションの氾濫」「漫画と芸術」「サイケデリックの季節」「プロヴォークの登場 」「もの派の台頭」「概念芸術の萌芽」
となっています。ひとつひとつは他でも紹介の機械があったものもありますが、こんなにまとめて出品されるのは初めてではないでしょうか?
このうち特に注目すべき展示のみを紹介したいと思います。
「社会と文化」などと言ってますが、ここの展示は反米・反政府運動がほとんどです。
具体的には日米安保条約・成田空港建設・ベトナム戦争などです。
分けてはいますが次の章である「美術界の1968」「1968年の現代美術」も美大の反政府運動や赤瀬川原平の千円札裁判などを扱っているので、この延長線上です。
写真が最も多いですが、映像、絵画、雑誌、書籍などジャンルを横断してこの時代の政治運動を紹介する展示は大変レアで、見ごたえがありました。
やはりこのジャンルで活躍したのが赤瀬川原平です。「櫻画報」が有名ですが、それ以外にも反政府系書籍の装丁は多数こなしていたようです。
大学闘争といえば東大が有名ですが、実際には美大など全国津々浦々の大学が暴動を起こしていました。
安保闘争で印象的だったのがこちらの作品。「新宿ステーション、ステーション、ステーション・・・」と何度もラップ調に繰り返しながら、混雑する新宿駅の映像が高速で流れます。
あとは3億円事件関係の作品も多数出てました。
こちらは反米や反政府とは関係ないのですが、インパクトのせいか、色んな作品に取り込まれていました。
木村恒久氏は在日米軍や環境問題についてのフォト・コラージュを多数発表。ちょっと見には面白い作品に過ぎませんが、当時の事件を取り込んで作成されています。
数は少ないですが、絵画も展示されています。時代そのものが政治性が濃かったことがよく分かります。
この時代はこれまで日陰者だった新しい表現が大手を振って次々に登場してきた時期でもありました。
美術館やデパートで前衛的な展覧会やシンポジウムが行われ、それに伴い、漫画、映画、演劇などもこれまでにない表現のものが多数登場しました。
現在も個展が開かれる著名な作家が多数登場します。
特に高松次郎氏は大型の作品が多数出品されていました。
この扉の作品は扉の表と裏、そしてその奥の青空(?)にもまったく同じ影が映っています。
難しいことは抜きにして影の面白さを表現した作品として優れています。
同時に扉の奥の水色も含めて、影を通して異次元に入り込んでいくような、SF的な表現が面白いです。
展示はこれらに加えて、70年代以降にさかんになる「もの派」や「概念芸術」にも触れています。
作品を作ることや、物質に頼らない体験や思索だけの作品へ向かっていく流れを実感できます。
大阪万博は1970年ですが、68年には既に万博の準備や議論が盛んに行われていました。
展覧会では万博と芸術家の関わりに注目。建物の上に仮設材と作業員とカラスのフィギュアを載せた横尾忠則や・・・
霧の彫刻を発表した中谷芙二子氏が紹介されています。
展覧会ではこれに並行して反博の動きも紹介。現在では万博賛成・参加派に対して彼らは知名度もなく、作品も残ってないことが多いのですが、両方の動きを同時に展示しているのは非常に珍しく、一見の価値があります。
10個くらいの展覧会を同時に見たような気分になれる、欲張りな展覧会でした。★★★
空虚な80年代★「起点としての80年代」 – 博司のナンコレ美術体験2019年3月17日 9:21 AM /
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