横浜のアソビルの「バンクシー展 天才か反逆者か」【 2020年3月15日(日)~9月27日(日) 】を見てきました。
バンクシーはイギリスのいま話題のストリートアーティスト。芸術テロと呼ばれる社会的メッセージの強い作品を、街角でゲリラ的に展開する作風で有名です。
その素顔は(少なくとも公式には)謎に包まれており、その神秘性も相まってあっという間に日本でも有名になりました。
近年ではオークションで落札された作品を直後にシュレッターにかけるという仕掛けで話題を呼びました。
日本でもバンクシーのものと言われる作品が発見されていますが、作品のテーマは出身国イギリスとその同根であるアメリカ、イギリスと関連が深いパレスチナが多く、それ以外の地域には関係ない作品も多かったです。
しかしそれだけに日本では新鮮な作品が多く、発見が多かったです。
ストリートアートのイメージがありましたが、今回の作品はほとんどが版画でそれも新鮮でした。
面白かった作品をピックアップしてみました。
ドーナツの味が違う種類があります。
ドーナツのキャンペーンカー(?)を警官隊が護衛しています。
バンクシーのメインテーマの一つに反資本主義があり、これもその一種と解説されていました。が、そういうこととは関係なく笑えるシュールな絵面が彼の魅力です。
イギリスは街角に非常に監視カメラが多い監視社会であり、それに反対した作品も多く見られました。
6つのモニターのうち3つは会場を映しています。
カメラ自体にもペイントが施されていました。
正面のカメラの前に立てばセルフで記念撮影も可能です。
反資本主義の象徴か、バーコードを使った作品も初期には多数見られました。
これも単純なユーモアを感じますが、バーコードの檻からヒョウが出てくるのは資本主義への反逆でしょうか?
バンクシーがパレスチナに作ったホテルの再現です。
イスラエルがパレスチナ自治区内に作った分離壁の目の前に作ったホテルで、自称「世界一長めの悪いホテル」。
ホテルの他にパレスチナのアーティストのためのギャラリーなどもあります。
バンクシーには他のアーティストとのコラボ作品も多いです。
宗教に関する作品もいくつかありました。
中でも印象的なのはやはり反資本主義の作品。
ショッピングバッグの中からお馴染みのネズミのシルエットが覗いているのもユーモアがあります。
バンクシーの作品は他作家のパロディも多いのですが、中でもウォーホルの作品は冴えていました。
バンクシー自身もウォーホルを敬愛するところがあるようですが、実際両者は現代社会に対する冷徹な分析など、共通点も多いように感じます。
この作品はウォーホルのキャンベルスープ缶のパロディであり、イギリスのスーパー、テスコのキャンベルスープ缶を作品にしています。
ウォーホルは(少なくとも表面上は)大量生産品を賛美しましたが、バンクシーは真逆の意味を作品に込めました。
これも反資本主義のブラックユーモアで、ショッピングカートを大真面目に狩る原始人(?)をユーモアたっぷりに描いています。
ショッピングカートが大中小揃っているのも笑えます。
宗教画に出てくるような嘆き悲しむ女性たちを描いていますが、その理由はセールの終了というストレートなユーモアです。
これを見て思い出したのがこちら。
また赤の地に白抜きというのはユニクロのロゴでお馴染みです。
この分かりやすさはバンクシーも着目しているのかもしれません。
元ネタは天安門事件での「名もなき反逆者」の写真です。
写真をもとにした作品も多くあるのですが、にしても何故ゴルフなのでしょうか?セレブなイメージだから?
元ネタは「捕獲された宇宙人」かと思いましたが、もちろんそうではなくて・・・
ベトナム戦争でのナパーム弾の攻撃から裸で逃げる少女です。
ミッキーマウスとドナルド・マクドナルドというアメリカを代表する極悪コンビに捕まった少女はどこに連れていかれるのでしょうか?
日本でも有名になったディスニーランドのパロディです。
ロンドン近郊に限定でオープンした大人のテーマパークで、中にはアトラクションにもなっている数々の現代アートが置かれています。
会場にはCMが流れていました。
写真はセキュリティチェックを行う作品です。
今回の展示はバンクシーの非公認とのことで、彼を詳しく知る人からすると不満が残るかもしれません。
が、値段に見合うボリュームはあるし、国内でいち早く実現した彼の展覧会というだけでも見る価値はあると思います。★★★