パナソニック 汐留ミュージアム(港区)の「子どものための建築と空間展」【2019年1月12日(土) ― 3月24日(日)】を見てきました。
学校や幼稚園を中心に、子供のための学びと遊びの空間を紹介する展覧会です。
同時に児童誌や玩具など子供のためのプロダクトも紹介されています。
特に戦前の少年誌の付録である三笠のペーパークラフトはすごかったです。今日普通に買っても3000円くらいはしそう。
当時の雑誌編集者の心意気が感じられます。
しかし展示のメインはやはり、学校、幼稚園など施設の紹介。明治から平成まで膨大な数が紹介されています。
ここでは特に面白かったものだけピックアップしてみました。
戦後木造建築として初めて国の重要文化財に指定されました。
川に向かってテラスが張り出しているのが特徴です。
円形の校舎が特徴です。設計者の坂本鹿名夫氏は円形校舎の利便性を訴え、実際多く建てもしましたが、現存してるものは少ないようです。
本校も円形部分はあまり使われず、左右の普通の校舎をメインに使っています。
円の中身は周辺が教室、中央は多目的ホールになっており、教室への動線が短くなる、多目的ホールで交流が生まれる、などのメリットがあったようです。
あの丹下氏が幼稚園とは似合わない!と思いましたが、非常に理にかなった設計です。
かまぼこ型の屋根がたくさん並んだ様子が可愛らしい。
セットバックによってゆるやかに階段状に教室が並んでおり、子供が外で走り回るのに適しています。
複雑な構成は多様で小さな空間がたくさん隠されており、遊びの空間として優れています。
丹下氏は他に広島子どもの家(現存せず)を設計しており、子どもの施設に意外と関心が深かったのかも。
オープンプランス、つまり文部省の指導に基づかない独自の教育を施す学校です。
内部の各所にはデザイナーのグラフィックが施され、家具や机、ロッカーに至るまで遊び心溢れるオリジナルデザインになっています。
教室も可動仕切で大きさを変えることができ、オリジナリティある教育に対応しています。
とても学校には見えない建物。名護市庁舎を彷彿させます。
しかし高低差を利用した設計は師匠の吉阪隆正氏を思わせます。
なんと子供が遊べる池まであります。
裸足教育を推奨しており、廊下も全部素足です。
分棟形式の学校は廊下に工夫があるものが多かったです。
首里城に隣接する小学校です。
トップライトを多用した屋根の設計は沖縄らしいですが、繰り返しのない多様な空間を作り出す手法はまるで縮小版京都駅です。
森の中にある学校は多数紹介されていましたが、これは別格。
木造の学校は1980年ごろから再び作られるようになったようです。
仙田氏はこどものための建築の本を多数書かれていて、この分野では第一人者です。
循環する廊下、シンボリックな建物、めまいを感じる空間、近道があること、多孔質な空間などの遊びの空間の条件を発表しており、本建築もその研究に基づいて設計されています。
学校や幼稚園は内部を見ることができないので、写真や模型の資料は非常に貴重です。
また意外な建築家が子供向け施設を設計してたりして、新しい発見に満ちてました。★★★
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