愛媛県今治市の亀老山展望公園に行ってきました。
設計者は隈研吾氏。
場所はしまなみ海道の大島。山の上にあり交通機関もほぼないため、車で行くしかありません。
都落ちの隈氏の90年代建築シリーズの一つです。他に高知県にも隈氏の建築がいくつかあり、氏の建物を巡礼するのはなかなか大変です。
隈氏の著書「反オブジェクト」の表紙にも使われている作品で、タイトルの精神を最も明確に表現している建物でもあります。
展望台のプランを提示された町長ははじめ驚いたそうです。
町長のイメージでは山の下からでもタワーが見える、街のシンボルになる建物をイメージしていたそうです。
ところが隈氏の案は逆に山を切り欠いて道を作るという正反対のものでした。
同時期の隈氏の作品は、水/ガラスのように、建築が見えることを拒否するようなコンセプチュアルなものが見られます。この展望台もそのもっとも先鋭的なものです。
動線は切り欠いた階段を上った後、左右の展望台にさらに登るというシンプルなものです。
非常に交通の便が悪いのに、訪れる人はかなりいました。
地元では絶景スポットして有名らしいです。
シンボリックなイメージは回避しましたが、展望台としての機能は流石に十分確保されています。
ただのコンセプチュアルアートに終わらないのが隈氏が他の建築家と違う点です。
仕掛けに派手さはないのですが、いかにも山を切り欠きましたという形状が露骨に分かる断面は結構面白いです。
展望台に置かれたベンチにしか見えないキューブはカメラが仕込まれています。
上述の反オブジェクトによると、これは3台の望遠鏡に仕込まれた仕掛けで、それぞれ
①どこだかわからない景色が見える
②望遠鏡をのぞく自分が前から見える
③望遠鏡をのぞく自分が後ろから見える
という仕掛けがあったそうです。展望台は景色を見るものという固定概念を疑う、隈氏一流の一種の皮肉ですが、実際に設置されていた望遠鏡は普通に景色が見えたのでこの仕掛けは撤去されたようです。
隈氏の思想がダイレクトに表れた作品ですが、普通に展望台としても優れたものでした。★★