• 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★前衛の前衛「ピエロ・マンゾーニ 無・痕跡・過剰」&ドキュメンタリー上映会「ピエロ・マンゾーニとグループ・ゼロ」

 

イタリア文化会館(九段)での講演会「ピエロ・マンゾーニ 無・痕跡・過剰」&ドキュメンタリー上映会「ピエロ・マンゾーニとグループ・ゼロ」

を見てきました。

 

ピエロ・マンゾーニ(1933-1963)はイタリアの現代美術家です。30歳で夭折したこと、いわゆる美術作品らしいものがほとんど残っていないこともあり、日本ではあまり紹介される機会のない作家です。

ですが、その発想のユニークさはもっと国内で知られていい作家です。

今回のイベントは記録映画と、マンゾーニの活動を振り返る公演がセットになっていて、マンゾーニのことも何も知らないという人にも親切な設計になっていました。

そのプレゼンに使われた資料を基に、その活動を振り返ってみたいと思います。

 

6位.アクローム

ピエロ・マンゾーニ「アクローム」

アクロームとは「色がない」という意味で、マンゾーニの初期の作品です。

モノクロームの発展形ともいえる命名ですが、あとの作品からするとこの辺りはまだ穏当に感じます。

 

5位.線シリーズ

ピエロ・マンゾーニ「15.8mの線」

芸術家の活動はあらゆるものが作品になる、という状況に痛烈な皮肉を加えた作品です。

これが制作風景です。髪の輪転機にペンをあてがっているだけです。

地球の長さの作品を作ると称し、実際多数の作品が作られました。

作品を展開したところです。

 

4位.消費芸術

ピエロ・マンゾーニ「指紋付き卵No.13」

マンゾーニ自身の指紋が刻印された卵です。

これも現代美術市場をからかったものですが・・・

実際卵を茹でて食べることで文字通り「芸術の消費」ができるのがキモです。

 

3位.アーティストの糞

ピエロ・マンゾーニ「アーティストの糞25番」

国内でマンゾーニを語る際、欠かせない作品です。

金額は中身に金塊を詰めた場合と同じとのこと。

固く封をされているため、実際に中に何が入っているのかは空けるまで分かりません。

この他、「アーティストの息」も販売されました。

「アーティストの血」も計画されましたが、実現しませんでした。

 

 

2位.リヴィング・スカルプチャー

生きた彫刻はイギリスのギルバート&ジョージが有名ですが、あちらは芸術家自身が芸術になるのに対して、こちらはアーティストがサインをした人が芸術になります。

人全体が芸術になるほかに、あるポーズをすれば芸術とか、体のどの部位が芸術とか、いろんなバージョンがあったようです。

一般人が芸術作品になるのは、芸術の大衆化でもあります。

 

1位.世界の台座

「魔法の台座」は普段作品を載せる台座の上に乗り、自分が芸術作品になるものです。「世界の台座」は普通の台座を天地逆に置くことで、「台座が世界を載せている」とみなし、世界そのものを作品にするという試みです。

赤瀬川原平「宇宙の缶詰」

赤瀬川氏の「宇宙の缶詰」はカニ缶のパッケージを剥がして内側に貼り、それを封することにより宇宙がひっくり返り、缶詰内部に宇宙が入っているという発想の作品です。

本作もこれと同様のアイデアを用いています。

 

その他、同世代の芸術家も紹介されました。

ピストレットとは同年、同じイタリア出身のフォンタナとも交流があったとのこと。

 

前衛芸術家の活動が知れる貴重な機会でした。イタリア現代アーティストの展覧会も期待です。★★

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