2018年10月24日
  • 日々観た展覧会や関連書籍の批評をしていきます。

★★建築図鑑⑲レトロ建築の住まい方「西長堀アパート」

(新建築より)

今回は大阪市西区の西舟堀アパートに注目してみたいと思います。

11月の生きた建築フェスティバル2017に合わせて訪問しました。このイベントは大阪の今も活用される歴史的名建築利用者の目線で紹介するというもの。先年リニューアルされたばかりの本物件はまさにこの理念にピッタリの建物です。

大山 顕「団地さん」より

西長堀アパートは1958竣工。日本住宅公団(現・都市再生機構)が最初期に建てたマンモス団地です。団地というとデザインにあまり遊びがないイメージですが、実際には初期の試行錯誤期には様々なバリエーションが試みられました。

(新建築より)

263戸という大型かつ高層アパートは公団も前人未踏の領域で、細いスリットが前面を覆う特徴的なファザードは高層化による住民の不安感を和らげる効果がありました。同時に竣工時は川が目の前を流れており、リバーサイドを意識したデザインでもありました。今でも水の都である大阪は東京よりずっとリバーサイドの景観に敏感です。

当初はハイヤー洋車寄せがあった中庭

当時としては大変な高級アパートであり、一階にはハイヤー用の車寄せもありました。

司馬遼太郎

初期の住民には作家の司馬遼太郎さんや、阪神タイガースの野村克也さんなど関西のセレブが多数入居していました。

大山 顕「団地さん」より

そのデザインには団地ファンも注目しており、団地マニアの大山顕さんがペーパークラフトにしているほどです。

 

(新建築より)

リノベーションの方針としては一階を中心に壁を増やして耐震補強を行い、集中ポストなどを一新し付加価値をあげる一方、特徴的なファザードやペントハウスは極力いじらない方針がとられました。

(新建築より)共用シャワー

面白いのが単身用に風呂、トイレなしの部屋があることです。交通の便がいい中心部に安く住みたいという人の要望に応えた形です。

一階の突き当りには関西の前衛芸術家集団、具体のリーダー吉原治良の陶板画が移設されました。

一階の共用スペースは集合ポストが一新された他、壁も増し打ちされました。

(新建築より)屋上ペントハウス
(新建築より)屋上ペントハウス内部

微妙な曲線を描くペントハウスも保存され、屋上は洗濯物を干すスペースとして開放されました。

SF的な無機質性を伴う廊下

改装にあたって当初の建具がきれいに残っていた一室は復刻住宅として販売されています。

物入れの下部のナゾのスペースは着物を入れる棚です。

台所の棚類もそのまま残っています。

風呂やトイレは現代の感覚からすると非常に狭いので、ほとんどの部屋では更新されています。

こちらは現代風にリノベーションした普通の部屋です。ただ扉のノブなど、部分的に当初の建具を使っている部分もあります。

フェスティバル参加者に配られた冊子です。

中身は当初の写真が多数使われています。

 

レトロ建築を好むファンの心理を抑えた実に「分かっている」リノベーションで好感が持てました。屋上を開放するなど今では通常のマンションでは味わえない楽しみも。同時に現代の多様な住まい方に対応する多彩な部屋が揃っており、提案型のアパートになっているのも面白いです。ナンコレ度★★

 

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